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メールマガジン 「語ろうか、手話について」
No. 50 2001年 6月13日発行
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こんにちは、1週間ぶりのご無沙汰です。
最近読み始めた人に改めて説明しますと、5回区切りの「語ろうか」は私の
過去の体験を話すことになっています。今回はNo.40から始まった映画「どん
ぐりの家」上映会の話の3回目です。
映画「どんぐりの家」は、アジアの各国語の字幕が付けられて、色々な国で
上映会が開かれているそうです。でも、国内では上映活動も終わってしまった
ので、見る機会はあまりないようです。ということで、ビデオの紹介です。こ
れを買えば、いつでも見ることができますね。少々高いのですが、興味のある
方は、是非どうぞ。なお、映画フィルムの貸し出しについても下記の問い合わ
せ先まで聞いてみて下さい。
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ビデオ「どんぐりの家」 VHS 110分 日本語字幕付き
長編ドキュメンタルアニメーション
原作: 山本おさむ
個人観賞用: 7000円+税
上映権付き: 15000円+税
(上映権付きは貸し出し、上映会で利用するための著作権保護の意味で
個人鑑賞用より高くなっています。個人鑑賞でない場合は、こちらを
ご購入下さい。)
問い合わせ先 : 映画「どんぐりの家」全国上映委員会
〒164-0011 中野区中央5-41-18 5F
TEL. 03-5385-2216
FAX 03-5385-2299
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では、前置きはこの程度にして本編です。
1997年の県サ連の定期総会が終わり、いよいよ年内には上映会が開かれるこ
とになります。
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石川県で映画の上映活動をし始めた我々に強力な助っ人が現れました。それ
が森川保さんです。
何がきっかけか忘れましたが、県サ連が「どんぐりの家」上映会に向かって
動き始めてから、しばらくして、映画の上映会運動に是非協力したいと言って
いる人がいる、と伝わってきました。その人は私が通っていた大学の隣にある
会社に勤めているとのこと。昼食に会うことにしました。
石川で、この映画に関わっている人は手話サークルの人、もしくは野々市の
工房シティ関連の作業所の人ばかり。作業所の人が運営費獲得のために積極的
に動くのと対照的に、手話サークルの人の場合、県サ連が言い出したために、
なんとかやっているという雰囲気がありました。森川さんは金沢の手話サーク
ル会員でしたが、わざわざ火中の栗を拾うようなこの申し出をする人は、いっ
たいどういう人なんだろう、と興味津々ではありました。
会ってみると、まさに会社員って感じの人。いったいどうして、という疑問
はひとしきり話してみても、よくわかりませんでした。今回の「語ろうか」を
書くにあたって、そのきっかけを森川さんに聞いてみました。
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私が石川県羽咋市で手話を始めたのが約20年前で、県サ連は名ばかりの
副会長をしていた記憶があります。
その後、転勤・結婚を経て約5年間ブランクがあり、サークルに復帰す
るのにはかなり勇気が必要でしたが、妻の協力(?)を得て(無理矢理サーク
ルに出席させられた)無事、復帰したところに、県サ連で「どんぐりの家」
上映資金調達のためのバザーをします、との連絡があり、私も参加するこ
とになりました。それまでは「ろう重複」という 言葉も知らずにいまし
た。
バザーに参加したのをきっかけに、漫画の単行本を買い、徳田さんの
ホームページも拝見し、次第に引かれていくようになり、全国上映が開始
されて即、待ちきれずに他県まで映画を観にいきました。多分石川県で最
初に映画を見た人は私だと思います。
「やはり、この映画は素晴らしい!」即地元での上映実行委員に名乗りを
上げました。ですから、金沢地区の上映が終わるまでは、はっきり言って
吉本さんの存在もしりませんでしたし、経過もよく分からないまま、突っ
走っていました。
金沢の上映も終了した時点で「県サ連」から事務局員のお誘いも、喜ん
で引き受けました。
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なんと大先輩だったんですね。手話にはだいぶ前から関わっていたとは聞い
ていましたが、県サ連にも関わっていたとは、私も初耳でした。
森川さんの復帰のきっかけとなったバザーは1997年3月に金沢の繁華街にあ
るアトリオという百貨店の前で行われたものだと思います。このバザーは私に
とって悔いのあるものでした。というのは、あまりにドタバタとした準備不足
のみずぼらしいバザーだったので、めちゃくちゃアトリオの人に怒られまして
ね。もう2度と、あの場所は使わせてもらえないということになってます。急
ごしらえの企画は駄目ですね。ご迷惑かけて申し訳ありません。
そんな裏話はさておき、県サ連の運動に復帰した森川さんに、県サ連として
の上映活動を担ってもらい、私は野々市の方に注力していくことになります。
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昔を振り返っていたら、この頃の資料を発見したので、今回は、その資料を
読みながら当時の様子を振り返ってみます。発掘した資料は、県サ連での会議
に使用した説明資料のようです。県サ連では6月に県内サークルの代表者が集
まる会議を実施しており、時期からして、その会議の打ち合わせに用意した資
料のようです。改めて読んでみると、私、かなり強気です。(以下、当時の資
料と、それを見ての感想を++++で区切ります。)
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県サ連でのどんぐりの家の今後の取り組み
1997/5/9 徳田 昌晃
石川県内での映画「どんぐりの家」の上映活動は、県サ連、ろう協、工房シ
ティが中心となって取り組みを始めています。県サ連も4月27日に定期総会が
行われ、ろう協と共に県内4ヶ所で上映することで合意が得られました。
ここでは、現状と今後の具体的な取り組みについて報告します。
1. 県サ連の状況
- バザーなどの活動により映画基金を3口作り、すでに全国上映実行委員に納
めました。これにより3ヶ所での上映が可能です。(注: ろう協を含めれば4
つ。)
- 事務局会議で次の事項を決定しました。
a) 上映会は、各地区で「県サ連事務局とは独立の組織」として作ります。
手話サークル、ろう協にとどまらず、地域の横の幅広いつながりを作り
ながら活動を進めていきます。
b) 上映会の会計は、県サ連とは独立に行います。県サ連事務局は、上映会
会計の赤字、もしくは黒字に対する対処は行いません。
c) 映画基金は、各地区での第1回目の上映会終了後、県サ連事務局に返却し
てもらいます。
d) 上映会での利益分配方法は上映会に一任します。但し、手話サークルが
得た利益は「聴覚障害者総合センター設立・運営資金」に寄付してもら
うよう、県サ連事務局より強く要望します。
e) 県サ連事務局は、各地区上映会の相互交流の促進と日程などの調整をと
ることに専念します。具体的な活動には事務局としては関与しません。
(県サ連の一員(役員ではない)として参加するのは構いません。)
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ここまでの部分だけですと、異様に事務局が他人を装いつつ、収益金はかっ
さらうという感じがします。よくも、ここまで強気の案を通したものだと我な
がら感心するやら、あきれるやら。
この時の問題は、地域上映会の温度差にあったと記憶しています。特に能登
地区には、上映会は県中央から降ってきた余計な負担、と思われているような
気がして、どうやって県全体を盛り上げていこうか、迷っていた時期でもあり
ます。学生で時間があったということで、サークルの例会に説明に出向いたこ
ともありました。今となっては懐かしい思い出です。
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2. 県サ連とろう協との活動
ろう協対策部と次の方針で活動中です。
- 上映会は県内4ヶ所(野々市を除く)で実施します。場所は未定です。
- 上映会はろう協、手話サークルが中心となり、地域に根ざし、幅広い団体
に参加してもらって設立し、活動します。
- 映画基金は県サ連3口、ろう協1口、計4口となっています。上映地域が決
まった時点で、どちらの基金を元にしているかを確定し、上映活動終了後
に返却します。但し、どちらの基金を元にしても、上映活動は共に活動す
ることにかわりありません。
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県サ連内部の話と違って、ろう協との話は建前的ですね。石川県の県サ連と
ろう協はかなり良い関係にあるのですが、それでも、内容としては当たり障り
のないことばかり書いています。「基金を元にしている」の判定基準をつっこ
まれたら、何も言えなかったでしょう。会議に出席されていた皆さんもそのあ
たりはわかっていたので、このあたりはフンフンと軽く流してくれたように思
います。
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3. 野々市地区の活動
野々市地区は作業所「工房シティ」が映画基金を納め、上映活動を実施して
います。これについて、県サ連とろう協、工房シティの間で次のような方針が
たてられています。
- 野々市地区は「工房シティ」が納めた基金により、上映を実施します。
- 野々市手話サークルと野々市ろう協は「工房シティ」に協力して、野々市
地区での上映活動を行います。
- 野々市地区の上映活動で得た収益は、全額「工房シティ」に渡します。日
程調整などは県サ連事務局、ろう協対策部、工房シティの3者で協議し、
決定します。
- チケットは大人1200円、子供800円。当日券は大人1500円、子供1000円。
- 10月3日(金)に野々市町文化会館(フォルテ)にて、上映会を実施します。
上映は16:00からと19:00からの2回です。
- チケットの販売の協力者、各団体の代表者が参加する、実行委員会を毎
月第2月曜日に開催します。(第1回実行委員会は4/28に開催済み)
- 随時、工房シティ、手話サークル「てのひら」、野々市ろうあ協会、他
必要な団体による事務局会議を開きます。
- 7月中にプレ企画を開催します。内容は未定です。
4. 問題点
考えられる問題点を列挙します。
Q1. 県内で上映会が3ヶ所程度しかできなかったらどうするのか?
A1. 今年中の開催は難しいかもしれないが、上映できる期間は2年あるから
たぶん4ヶ所でできるでしょう。
Q2. 逆に、4ヶ所が決定して、さらに上映会を実施したいところができた場
合にはどうするのか?
A2. 1回につき20万円を支払って実施します。
Q3. 学校などで上映会は実施できるか?
A3. 2年後に学校への普及活動を実施することを、全国上映実行委員会で検
討しており、今の段階では控えた方が良いでしょう。
Q4. 赤字の補填は本当にしないのか?
A4. しません。理由として次の2つがあげられます。
1) 地域ごとに各種団体が参加する上映会に、県レベルの組織である県
サ連が直接関わることで混乱が生じる。
2) 予算案によれば、赤字にならないための最低チケット販売数は、約
400枚であり、これを達成できない地域では、事務局としても上映活
動を支援できないと考えています。
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この上映会で問題となったのは、野々市だけが独立して動いていたことと、
赤字になったらどうするのかの2点でした。どこの地域でも赤字になることを
極端におそれていて、それが杞憂であることを説明するために、モデル予算を
作ったり、チケットを売りやすいように県内統一料金を設定したり、他の地域
の客を奪わないような仕組みを提案したりしました。ただ、その理屈を考える
時に、どうしても、野々市が独立していることが壁となったのは事実です。実
際は私が野々市に参加していたので、理屈にほころびが出ても、活動の中で修
正できるだろうと思っていましたが、会議ではそんなことは表だって言えない
し、「私の、この考えを、この資料から察して、動いてくれー」って気持ちで
した。
野々市の活動は工房シティという作業所が主体となっていましたが、その活
動の熱心さは、とても勉強になりました。確かに運営資金を稼がなくてはなら
ないというせっぱ詰まった事情はあったにしても、わずか数人のスタッフを中
心に、ビラを配ったり、寄付を募ったり、人を集めるという方法は、熱意でや
るものなんだな、と勉強しました。そして、プレイベントとして「どんぐりの
家」の施設長の細野さんを招いて講演することになります。私は、こんな小さ
な地域の運動で埼玉からゲストを招くのは消極的だったのですが、最終的には
このイベントは、金沢地域にも良い影響を与えることになり、やってみるもの
だなぁ、と思いました。
ただ、工房シティがこちらに対して気を遣いすぎているなぁ、という雰囲気
はありました。実行委員会ではミニ手話講座を取り入れてくれるとか、県サ連
が無茶な話を言っても飲んでくれるとか、あまりこちらが動かなくても、ほと
んど文句が出てこないとか。個人的には、申し訳なくて、こんなんでいいのか
なと思う気持ちもあります。後で恩を返すというより前に、対等に活動してい
ればこんな気持ちも起きないわけで、なんとかならないかなと思いつつ、結局
最後まで突っ走ってしまったのが実情です。
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5. 手話サークルとしての今後の活動
自分の地域で実施が可能か検討して下さい。このために、ろう協、近隣手話
サークルとの相談を行って下さい。一つの基金では一つの市または町でしか実
施できないことに注意して下さい。(例えば、小松地区で実施する際に、根上
で実施すると、小松では実施できない。)
県サ連事務局として、県内ブロックとして次のような分割が適当であろうと
考えています。これらの地域割にはそれぞれの地区の事情を考えると、まだ話
合いの必要があると考えています。地区割を含めた相談を実施して下さい。
上映が可能ならば、上映会を設立して下さい。この際に手話サークルやろう
協だけでなく、他の団体(社会福祉協議会、作業所、他の障害者団体、学校、
親の会など)にも呼びかけて、幅広い協力を募って下さい。
今から準備する場合、9、10月の上映会は難しいでしょう。冬休みや来年の
耳の日を目標にした計画が適当と思います。
地域の分割案
能登地区 : 七尾より北部(七尾、穴水、能都町、輪島)
口能登地区: 七尾から、内灘まで(七尾、羽咋、内灘)
金沢地区 : 金沢市
松任地区 : 松任周辺 (松任、能美郡、石川郡、金沢市の一部)
小松地区 : 小松周辺 (小松、根上、能美郡)
加賀地区 : 加賀周辺
スケジュール案案
実行委員会設立 チケット販売期間 上映日
A案: 1997年8月上旬 1997月8月下旬〜12月下旬まで 1997/12/20頃
B案: 1997年10月下旬 1997月11月〜1998年3月まで 1998/03/03頃
C案: 1998年2月 1998年3月〜1998年夏まで 1998年夏休み
6. 参考資料
予算案
収入: チケット販売
前売 大人 1,200 x 450 = 540,000
子供 800 x 50 = 40,000
当日 大人 1,500 x 20 = 30,000
子供 1,000 x 5 = 5,000
支出
映画基金 100,000
上映分担金 30,000
支援基金 (総収入の3%) 18,120
会場費 50,000
映写機代 20,000
映写技師等人件費 20,000
共通ポスター 60円x 30枚 1,800
共通チラシ 8円x 1500枚 12,000
チケット 4円x 600枚 2,400
印刷、資料代 30,000
手話通訳、要約筆記、保育等 30,000
会議費 50,000
事務用品等 20,000
予備費 19,680
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総計 404,000
純利益 200,000円
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この資料を振り返って読んでみると、よくここまで資料を作ったものだと自
分を褒めてあげたいですね。とても今ではできません...
地域で実行委員会を立ち上げろだの、地域で人を集めろだの、収益を県に戻
せだの、勝手なことを言う代わりに、少しでも負担を減らすために資料を作ら
ないとな、という気持ちはあったのは確かです。これだけ事前にやったので、
反対も少なく、なんとか地域上映会を3ヶ所こなしていった、と思います。
この時は、個人的に、まだ6ヶ所上映を考えていた節はありますが、結局3ヶ
所になります。このあたり、ほっておくと、無謀な計画を作ってしまう私の性
格が表れています。
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来週はいつもの「語ろうか」に戻り、この話の続きはNo.55になります。
では、また来週。
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