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No. 114                                             2007年 4月18日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  こんにちは、ハードディスクレコーダーの調子が悪くて困っている徳田です。

  どうやらディスクトラブルなのでディスクのみを交換すれば直りそうです。
が、そのためには250Gのハードディスクに入っている録画したものを退避しな
ければなりません。これが大変大変。いっそのこと、もう一つレコーダーを買
おうかと思うぐらいです。お金がないから買わないけど。

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  今回は前回の続きの書き貯め原稿ですので、これを書いているのはだいぶ前
です。この間に大事件が起きていないといいんですけど。

  前回は日本国憲法に規定された一般的な人権について、私見を述べてみまし
た。私見ですけど、私にしては珍しく標準的な解釈だったと思います。
  今回は、人権の方面からグッと障害者の権利に近づいていきます。

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  さて、障害者権利条約に規定された権利は、この人権と関連づけた方が理解
しやすいように思います。
  法学的にそれが妥当かどうかは、わたしにはよくわからないので、あくまで
も個人解釈ですけど。

  で、障害者の権利を考えるときにセットで出てくるのが「合理的配慮」と、
その対義語の「過度の負担」です。

  人権 <--> 公共の福祉

  に対して

  合理的配慮  <--> 過度の負担

  という感じです。

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  まず、「合理的配慮」とは何か? なんですが、これは障害を持つアメリカ人
法(Americans with Disabilities Act)あたりから、一般に知れ渡ってきたよ
うで、「障害者に対しては、合理的配慮をしなければならない」というものだ
そうです。

  例えば、市役所に入るところに階段があったら車いすの人が入れないから、
何か対処する必要があります。その「対処」が合理的配慮です。それはスロー
プを作ることであったり、役所の人間を鍛えて車いすごと持ち上げてあげるこ
とかもしれないし、車いす用エレベーターを設置することかもしれない。とに
かく、目的を達するための方策であれば、なんでもいいんです。

  そして、その反対の「過度の負担」というのは、この「何らかの対処」があ
まりに難しい場合のことです。
  だから、役所の人間がみんな体力無くて車いすが持ち上げられなければ、そ
の対処方法は「過度の負担」。スロープを作るお金がなければ「過度の負担」
となります。

  ですから、時と場合により、ある方策が、合理的配慮になるか、過度の負担
になるかはマチマチという事になります。
  そして、この合理的配慮と障害者の権利条約との関係ですが、権利条約では
「常に合理的配慮をすべし」と定義されています。が、それは「過度の負担に
ならない範囲で」との注釈付きです。
  つまり、障害を除去するような方策は常に考えなければならないが、過度の
負担と言うことになれば、免責されてしまうわけです。障害者の権利条約は方
策をとることを押し進めつつも、同時に免責も認めてしまっているわけです。

  まぁ、確かにこのあたりの解釈は徳田流なので、行き過ぎのところはあるか
もしれません。でも、私はそんなに外れたことは言ってないと思います。

  となれば、私の言いたいことは、もう、おわかりでしょう。
  手話通訳をつけることがろうあ者にとって合理的配慮か過度の負担かは場合
によりけり。過度の負担となれば、権利条約自体が手話通訳をつけないことを
認めてしまうことになってしまいます。

  となれば、問題は合理的配慮と過度の負担の線引きです。
  これはADA(障害を持つアメリカ人法)でも、かなり苦労してきた点のようで
す。
  例えば、スロープを作るのにお金がかかると言っても、東京23区の役所とも
なれば、あんなに人口が多い地区で税金もたくさん取っているのに、スロープ
ごとき作れないなんてありえないだろ、と言えるわけです。が、夕張市のよう
に破綻した経済の所では、スロープなんて作れないよ、となります。

  JRは障害者割引がありますが、同じ鉄道でも潰れるかどうかの瀬戸際の銚子
電鉄にしてみれば、割引は過度の負担になります。

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  さて、手話通訳です。

  ここまでくれば、最初のQ&Aの話はすぐにわかります。会社が傾くほどの赤
字になってまで手話通訳をつけて講習会を開くのは、過度の負担です。そこま
では障害者の権利条約でも求めていないのです。

  しかし、もし、手話通訳が無料で派遣できるならば、この講習会に手話通訳
をつけるのは合理的配慮の範囲内でしょう。ですから、逆に手話通訳がつかな
いのは権利条約に反しています。

  ですから、手話通訳がつけられるかどうかは、時と状況によるわけで、普段
からどんな体制を作っておくかが重要になってきます。手話通訳が欲しいので
あれば、手話通訳が使える状況を作っておく必要があるわけです。

  会社で、会議がわからない。手話通訳をつけなけばわからない。でも、手話
通訳は高い。となると「申し訳ないが、うちでは派遣費用の負担は重すぎる。
会議録を後で読むことで我慢してもらえないか。会社ではきっちり会議録を作
るようにがんばるから」と言われたら、これは、まさに障害者の権利条約が容
認した状況のように私には見えます。

  でも、それで、手話を使うろう者の権利って守られていると言えますか?

  「手話が言語と認められた、バンザイ」と障害者権利条約を受け入れた場合
には、じゃ、絶対に通訳が必要であるなら、それはうちでは過度の負担だから
無理。という流れを促進する可能性が無くはない。
  それはまさに手話が言語であるがために、手話通訳がつけられなくなってし
まうわけです。ちょっと理屈が強引かな?

  こうなってくると、今までは手話通訳はろう者の人権を守るものとして、強
力な人権を盾に運動してきたのに、これでは障害者権利条約は足を引っ張るば
かりではないかという感じがしますが、そういうわけでもありません。
  というのは、障害者権利条約は、「必ず」合理的配慮を求めるからです。合
理的配慮がされない場合は、問答無用で条約違反(というのが法律的に正しい
用語かどうかに自信はありませんけど)なわけです。

  ろう者が会議に出ているのに、手話通訳もなければ、要約筆記もない、満足
に議事録も作られなければ、内容を伝える手段を全然とらなければ、合理的配
慮がないとみなされるわけです。手話通訳派遣料が高というなら、同席してい
る人がメモぐらい書けよ、最低限の努力はしろよ、というのが障害者権利条約
です。
  そして、もし、通訳料の派遣費用が低ければ、合理的配慮の中に組み入れら
れてくるわけです。

  ADAの場合、法律は職場での問題は15人以上の事業所の場合に適用されるよ
うです。
  日本では、この線引きが今から始まります。このハードルを低くするか、高
くするかは、権利条約も絵に描いた餅になるかどうかは、まさに日常的な我々
の努力にかかっています。

  自立支援法では派遣事業が市町村レベルに降りてきました。東京では都が予
算を0(ゼロ!)にしてしまったので、都の派遣事業は縮小を余儀なくされていま
す。こういう状態では、派遣事業がなく、設置もない都内の市町村では手話通
訳が過度の負担になりかねません。
  「権利条約で手話が言語として認められた。手話通訳が必要」なんてことを
お題目のように唱えているだけでは、「では、その条約にある合理的配慮を根
拠に、手話通訳は諦めてください」なんて言われて足元をすくわれるかもしれ
ません。
  私が費用を負担する立場だったら、そんな理屈を考えます。
  そうならないようにしっかり勉強して、そして通訳体制をしっかりして、利
用しやすいようにしておく努力が必要でしょう。

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  最後に蛇足ながら。

  私は法律の専門家ではないので、今回の障害者の権利条約の解釈は間違って
いるかもしれません。が、少なくとも、この権利条約には、手話と言語だけの
関係だけではなく、それ以外の部分にも重要な項目があることは確かです。

  もし、皆さんが今後、障害者の権利条約について書いてある文書や講演を見
聞きする機会があれば、手話と言語の話以外に、合理的配慮についても書いて
あるかどうかチェックしましょう。講演だったら質問してみましょう。
  もし、合理的配慮についての言及がなければ、その文書や講演は、あまりよ
く練られていない可能性が高いので、ちょっと疑ってかかった方がいいかも。

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  では、次回の語ろうかをお楽しみに。

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