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             _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』   _/_/
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No. 94                                              2002年10月15日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  皆さん、こんにちは。
  厳しい残暑もあっという間に終わり、急激に秋から冬へと移行中の今日この
頃、いかがお過ごしでしょうか。
  私は引越も終わり、大量の荷物に囲まれた生活を送っております。よくぞ、
6畳の部屋にこれだけ入っていたもんだと感心しております。落ち着くまでに
は、数週間かかりそうです。そういうわけで、昔の住所や電話番号、FAX番号
をご存じの方は、それらは変更になりましたのでご注意下さい。郵便は転送さ
れますし、携帯電話はそのままなので、特に個別に連絡はしておりませんが、
関係者の皆さんへは年賀状でお知らせするつもりなので、よろしくお願いしま
す。

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  さて、そんなわけで、拠点手話サークルも、変えることになりました。これ
で3回目です。「拠点」の考え方にもよるとは思いますが、私なりの定義とし
ては、行事の連絡が流れてくるとか、何か活動するときの肩書きにできる地域
のサークルを「拠点」と考えています。今回、とりあえず場所は聞いているの
ですが、まだ行っていません。最初は、ちょっとドキドキですよね。さすがに
手話が通じないと言うことはないと思うのですが、もう手話サークル歴が10年
以上ともなると、下手な手話だと恥ずかしいので体調万全の時に... などと考
えているので、新サークルデビューはもうちょい落ち着いてからと思っていま
す。

  そんな新サークルに行くと、よく聞かれるのが、どうして手話を始めたか、
とか、前に住んでいた所の手話とこっちの手話は違うか? という質問です。
  きっかけの話は、No.70で語っているんで、今回は手話の違いについて話し
ます。

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  手話サークルを変えなくても、何かの機会があって、他県の手話サークルに
行ったときには「手話の違い」について、よく聞かれます。私の場合、特に前
回は石川県から千葉県への引越でしたので、「石川県の手話は千葉とは違いま
すか?」と、ことあるごとに聞かれました。それで、私の場合、その場の雰囲
気次第で適当に答えているんですが、たいていは「違うところもあるし、同じ
ところもある」と、何かのコントのような答えでお茶を濁しています。雰囲気
的に違いを聞きたがっている人には、単語表現の違い(例えば曜日表現とか)を
あげてみたりしますし、一般的な場を持たせるような質問の場合は「そんなに
変わらないですよ」と言ったりとか、まぁ、適当なんです。

  というのも、正直なところ、よくわからないんですよ。

  言葉のとらえ方には、いくつかの方法があります。代表的なものに、No.48
から何回かに渡って説明した言語学の階層状に解析した考え方があります。形
態素、構文、意味、文脈とかいう話です。今回は、そこまで踏み込まないので
単語、文法、意味ぐらいに省略しましょう。手話の違いがあったり無かったり
というのは、このレベルで考えると説明しやすいと思います。

  まず、単語ですが、これはかなり違いが見られます。初級手話講習会でも出
てくる有名な例として「名前」がありますね。指文字の「め」を胸に付ける表
現と、名札の模式の2種類が引き合いに出されます。
  私がよく使うのは「火曜日」「水曜日」です。この2つは意味の曖昧性があ
りませんし、日常的によく使われるので地域内では安定して使われる表現があ
るという特徴があります。そして、月曜日や金曜日のような図象的な表現がな
いので、地域ごとにまちまちという点で、違いがわかりやすいんです。

  というわけで、単語の違いは、こんなわけで、一目瞭然、色々とあることが
わかります。ただ、単語によっては、地域差というよりは、個人差というもの
が大きいことがあります。ですから、それを手話の方言というのか、それとも
個人差というのか、判断は、なかなか微妙なものがあります。それと、よく言
われる「名前」の表現にしても、関西が「め」、関東が「名札」と言われます
が、名古屋あたりではどうなるのかとか、関東にいても「め」を使う人がいた
りして、違いに地域性がない、つまり方言と言い切れないことがあったりしま
す。そうなると、確かに違いはあるのだろうけど、それを方言と言っていいの
か、個人差と言うべきなのか、それとも単に私の偏見かも、と迷うことがあり
ます。

  そういう迷っているものについて、ズバッと「地域ごとに違う」とか、「同
じ」と断言して回答してしまうと、マズいだろうなぁ、と思うわけです。

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  次に文法ですが、これが全然わかりません。そもそも手話の文法というのが
よくわかりません。そりゃ、私もなんとなくならば、手話らしい文、手話とい
うには違和感がある表現の区別はできますが、はっきり説明しろ、というわれ
ると、とうていできません。

  これだけではなんなので、ちょっと無い頭をひねって、考えますと、文法の
違いを実感するには、ある地域の文章表現を、そっくりそのまま単語だけ置き
換えて、他の地域で通用するかどうかを見ればいいのではないかと思います。
つまり、千葉で「毎日単調な仕事でとても疲れている」という表現を手話で表
現してもらい、単語だけ石川県流に置き換えて、石川の人に見てもらいます。
それで違和感があれば、千葉と石川では文法に違いがあると言えるでしょうし
全く問題なく通じれば、文法の差異はないと言うことになるでしょう。そうい
う視点で考えると、私の印象では、地域ごとの文法の違いは、それほどないよ
うに思います。むしろ、文法は、地域より、世代間や学力の差の方が大きいよ
うに感じます。

  それから、たまに「他の地域のろう者でも、手話ならすぐに通じる」という
話を聞きますので、これも文法の違いがあまりない証拠なんじゃないかなぁ、
と思います。ですが、これも俗説かもしれませんし、なんとも私には判断つき
ません。

  ただ、単語は地域ごと、個人ごとに違いがかなりあり、文法が同じようだと
すれば、手話というものを全体で考えると「違ったり、違わなかったり」とい
う私の回答は、それほど的外れではないと思うのです。

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  最後に意味ですが、地域の違いを痛感したことがあります。ただ、これは単
語そのものに依存した意味で、語用的な意味ではないかもしれないので、あま
り良い例ではないかもしれませんが。
  それは、「駐車場問題について、討議したい」の「ついて」を手話で表現す
るとき、関東では指文字の「め」を組み合わせて前に出す「だから」の手話を
使うのが一般的だと思います。この単語、他にも「ので」としても使うからな
んだと私は解釈しています。
  ですが、石川県では、指文字の「も」のつまんだ状態をくっつける表現を使
います。でも、使わない人もいるんですよね。ここが難しいところですが、関
東のように表現する人もいます。私は「も」で習ったのですが、しばらくする
と「だから」派が多くなったので、「間違って覚えたのか?」と思ったもので
す。ですが、半年ほど前、私と同じように石川から千葉に来た人が「も」表現
を使っていたので、ちょっと安心しました。
  その「も」なんですが、関東の人から見ると、どう見ても「キス(kiss)」に
しか見えないようで、すごい混乱するようです。私の真似をして例文を表現し
た人が「そんなHな表現しないで」と注意されたことがあって、それで私も意
味の違いに気がつきました。
  単語表現が、直接意味と結びついた例なので、ちょっと例として適切ではな
いかもしれませんが、表現の解釈が地域によって変わってくることがあるわけ
です。ただ、最近では、意味の曖昧性の少ない新しい手話というのが増えてき
ていたり、テレビで手話が流れることが多くなって全国的に共通化が進んでい
る状況から、だんだんと意味の違いも薄れてきているのではないかと思うこと
もあります。

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  以上のようなわけで、手話の違いを聞かれたときには、「違ったり、違わな
かったり」とそれなりの信念を持って、適当な返事をしております。

  日本語で「方言」というと、関西弁とか、東北弁とか色々ありますが、単語
の表現だけでなく、発音や文法的な違いも含まれます。特に最近の日本語の乱
れというのは、実は方言を取り入れているだけ、という説もあり、ら抜き、さ
入れも典型的な方言の文法の影響です。
  手話も単語のみに注目すれば、方言とも言えますが、それだけに注目して「
これが手話の方言だ」というと、ちょっとなんだかなぁ、と思うわけです。た
ぶん、文法や、発声派(たぶん、スピードや間が該当すると思うのですが)も、
地域特性があると思います。私にはいまいち、そのあたりはよくわかりません
が、もし、方言に言及される方がいるなら、単語だけでなく、他の側面も調べ
て欲しいなぁ、と思います。

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  次回の予定は全くの未定ですが、ここしばらくは色々と行事が続くので、何
か面白いネタがあれば報告のようなものができるのではないかと思っていま
す。来月、11月の8、9日に、石川県手話サークル連絡協議会の一泊研修会があ
るのですが、なんとまぁ、そこの分科会で「ちと話をしてくれ、無料で。旅費
も自腹で。食い物だけは出す」と招かれている(というより呼び出しをくらっ
ている?)ので、なんかネタはできそうです。なにぶん、人前で手話サークル関
係の話をするのは初めてなものですから、どうなることやら。メルマガを読み
返しながら、何を話せばいいのか、思い悩んでおります。ということで、石川
県の人は、11月8、9日にお会いしましょう。

  ほんではでは。

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