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             _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』   _/_/
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No. 86                                              2002年 8月21日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  皆さん、こんにちは。
  ここで天気の話を書くと、いざ配信する時は全然違ってしまったりするので
すが、とりあえず、関東では暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか。
東北や北海道ではとても寒い日が続くようで、全国の皆さんになんて挨拶すれ
ばいいのか戸惑う今日この頃です。

  月刊のはずなのに、隔週間で発行されたのは、たまたまです。前のメルマガ
を配信したのは石川県を旅行している最中でしたが、その時の話を早く書かな
ければと思いつつ、今日になってしまいました。内容が、ちょっと時期を逃し
てしまった感もありますが、そのあたりは差し引いて読んで下さい。

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  まず、本題に関係あるお知らせを。
  石川県の金沢市と松任市が職員を募集しています。グダグダと細かいことを
書いてありますが、要は手話通訳者の募集です。No.84でも書きましたが、こ
れはとても珍しいことで、めったにないチャンスです。ただ、金沢市の方は締
切が過ぎてしまっており、松任の方も来週までなんです。
  その応募要項を全通研会報の臨時号No.2から引用します。

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  金沢市職員採用候補者試験案内
      大学卒業程度職務経験者特別募集

  受付期間     平成14年8月7日(水)〜8月20日(火)
  第一次試験   9月1日(日)
  第二次試験   10月中旬の予定(第一次試験合格者に通知)
  試験区分     事務(社会福祉)
  採用予定人員 2人程度
  職務内容     社会福祉関係業務などの一般行政事務
  受験資格     昭和38年4月2日から昭和48年4月1日までに生まれた方で、
               大学卒業程度の学力を有し、民間企業棟の経験年数が5年
               以上ある方。手話通訳士等又は社会福祉士の資格を現に
               有する方。
  受験手続き   申込書の請求及び受験に関する詳細は下記へお問い合わせく
               ださい。
                 金沢市総務部職員課
                     〒920-8577 金沢市広坂1丁目1番1号
                     電話  076-220-2079

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  松任市職員の募集
      平成15年度採用の職員採用候補者(手話通訳士)試験の案内

  受付期間     平成14年8月1日(木)〜8月30日(金)
  第一次試験   9月22日(日)
  第二次試験   11月上旬の予定(第一次試験合格者に通知)
  試験区分     手話通訳士
  採用予定人員 1人程度
  職務内容     各部局における手話通訳及び一般行政事務に従事
  受験資格     昭和38年4月2日から昭和53年4月1日までに生まれた者で、
               厚生労働省公認手話通訳士又は都道府県認定(登録)の手
               話通訳者の資格を有し、手話通訳士(者)として3年間の実
               務経験を有する者。
  受験手続き   申込書の請求及び受験に関する詳細は下記へお問い合わせく
               ださい。
                 松任市総務部職員課
                     〒924-8688 松任市倉光2丁目1番地
                     電話 076-276-1111 (内線5232)

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  これはすごいチャンスです。受験資格のある人にはとてもおいしい話です。
No.84で書きましたが、手話通訳で食っていくためには、現状では、公務員に
なるしかないわけで、これはまさにその千載一遇の機会です。

  他県の人向けに石川のことについて、ちょっと説明しますと、石川という所
は、湿度が高いので、夏は暑く、冬は寒いと気候的には最悪です。でも、今は
クーラーも乾燥機も除湿器もありますし、湿度が高いので女性は肌が綺麗とか
そういうことを考えると、なかなかいい所だと思います。雪も他の地方の人が
思うほど降らなくて、金沢や松任なら幹線道路はすぐに除雪されて、普通車も
走っていますし、積もったとしても、膝ぐらいまできたら大雪って感じです。
普通は20cmぐらい、雪合戦するにはちょうどいいぐらいです。
  それに、魚はおいしいし、菊姫や天狗舞といったおいしい日本酒はあるし、
ハントンライスもあるし、JUSCOも21時まで営業しているし、本屋も0時まで開
いているし、民放も4つあるので、都会から引っ越してもそれほど違和感無い
と思います。探偵ナイトスクープも関西と同じ時間帯に放送しています。

  でも、なかなか、この受験資格を持つ人自体が少ないようで、実は松任市の
試験は1回締切を延ばしています。もしかしたら、金沢市も延長するかも...と
いうこともあるので、募集要項は載せておきます。やる気のある人は積極的に
問い合わせて挑戦してみて下さい。

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  さて、石川県のこのような状況は、ただなんとなく待っていたら、こうなっ
た、というわけではなく、ろう協、サークル、全通研が、前の障害者プランの
時に、手話通訳者の設置を求めて運動した成果です。前述の三者から構成され
る「石川県手話通訳制度を確立する推進委員会」が中心になり、行政交渉など
をやっていました。私は推進委員のメンバーでないので、具体的な活動として
はサークルでのオルグ活動とか、署名ぐらいしかわかりませんが、市町村に要
望書を送ったり、市長と話す会にこまめに出席したりしていました。そして、
その活動を機関誌に載せて、さらに、サークルをグルグル回って設置や派遣の
意義を説明したりと、サークルの一会員でも設置運動の状況がわかるような活
動をしていました。ですから、サークルには、手話の設置とか派遣といったこ
とを理解している人が多かったように感じます。
  そんな地道な活動の結果、公的機関に正職員として手話通訳者を設置すると
いう点では石川県は全国的に見ても先進地域になったと思います。京都や東京
のようにあちこちに手話通訳者がいるような地域もありますが、通称裏日本と
呼ばれ、能登半島と言っても大半の人がどこだかわからないような地域にあっ
て、お役所に設置通訳者が3人もいる。そして、これからさらに増える見込み
というのは、とてもすごいことだと思います。

  そんな先進地域らしい悩みを聞いてきました。いよいよ、本題です。

  今月初旬の私の石川への旅は、久しぶりに自分が所属していた手話サークル
の様子を見て、みんな元気? と聞いて回ることが目的で、それは十分果たせて
ついでに、最近の様子も聞いてきました。私は突然引っ越ししてサークルを辞
めたような状態だったので、申し訳なく思うところがあったのですが、当時、
まだ手話の勉強を始めたばかりの人が、今は教材の準備をしていたりするのを
見ると、ホッとするやら、苦労かけて申し訳ない気持ちやら色々と感慨深かっ
たです。

  そんな中、小耳に挟んだ話として、最近、サークルに入ってきた何人かの動
機が少し変わっているというものがありました。それは「公務員の試験に有利
だから手話を勉強したい」という人がいるそうです。どこかの市の試験で自己
アピールで手話ができると有利だいう噂があったり、新聞などに載っている募
集要項にも手話ができることが云々と書いてあったり、就職指導で手話ができ
た方がいいと先生に言われた、という事情があるようです。そんなわけで、公
務員試験のために手話を勉強したいという人が増えているそうです。もっとも
そんな人達が全部が全部、とんでもない人と言うわけでもないのですが、サー
クルの会員から見て、一番気にさわるのが、挨拶とか簡単な文章を書いてきて
「これを手話ではどう表現するんですか?」と、そのものズバリだけを聞いて
くる人だそうです。手話を勉強するなら、もうちょっと色々と知って欲しいこ
とがあるよ、と思うのですが、もう目が血走っちゃって、それどころじゃない
感じらしいです。
  逆に、熱心な人でも、とにかく手話ができるようになりたいので、ろう者と
一生懸命話そうとするのですが、端から見ていると、指文字も独学で学んでき
たような人だから全然話になっていないわけです。ろう者の方も、そのサーク
ルは高齢者が多いので、独特の表現をする人だったり、日本語も半分ぐらいし
か通じなかったりする場合があります。ですから、普通なら最終手段の指文字
をやっても、その言葉の意味がわからなかったりする状態になってしまうわけ
です。そんな時、長くサークルにいる人が助け船を出そうとするのですが、「
自分はろう者と話をしたいのだ」と言って、ぜんぜん耳を貸さないような人が
いるそうです。

  私も噂話程度に聞いた話ですし、多少誇張も含まれているだろうし、みんな
がみんなそういうわけでもなくて、中にはまじめに手話を勉強したいという人
もいるとは思います。でも、「公務員になるため」という人が増えているのは
確実なようです。

  不景気だと言われている今日この頃、公務員になりたい人が増えているとは
聞きましたが、若いうちから、そんな姑息な手段で試験を通ろうとするのもど
うかと思うのですが、それは今回は脇に置いておきます。

  手話サークルは一般社会との接点であり、前線基地であり、サークルは社会
に向けて聴覚障害者への理解と手話の普及を目指すものだと私は考えています
が、こういう形の接点が出てくるとは思っていなかったので、私もどひゃー、
と思った次第です。手話通訳者を公的機関に入れることに成功したのはいいけ
ど、それがこんな方向でも社会に影響を与えるんだなぁ、と思い知らされた次
第です。

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  手話が通じるようになるのは、皆さんも実感していると思いますが、ほんと
難しいです。その石川のサークルにいたときの話ですが、JUSCOのサービスカ
ウンターで働いている人が手話サークルの会員にいました。その人は1年ぐら
い勉強していて、簡単な会話ぐらいならこなせるような感じでした。ある時、
職場(JUSCOのサービスカウンターです)にいると、ろう者の夫婦が来ました。
その人達はサークルで何回か会ったことのある知り合いの夫婦で、彼女に会っ
て、これはタイミングの良いところで会った、と思ったのでしょう、手で四角
の形を表したのだそうです。それで、彼女は、サービスカウンターで売ってい
る商品券やチケットのことかと思い、それらを指さししてみるのですが、奥さ
んは、違う違う、と首を振り続けるのだそうです。そのうち、いつの間にかい
なくなっていただんなさんが戻ってきて、あっちあっちと奥さんを連れていく
ので、その人も気になってついていったら、そこは銀行のキャッシュコーナー
(ATM)だったんですと。なーんだ、と思うオチなんですが、そのわからなかっ
た時の彼女はとても必死で、とても困ったとのことでした。「もう、全然通じ
なくて情けなくなりました」とか、言っていたように思います。

  さて、手話通訳者になりたくてサークルに来た熱意のある彼/彼女らには残
念ですが、先の金沢市と松任市の募集要項を見ると、経験者でなければ受験資
格がありません。この募集要項の作成には石川のろう協、全通研関係者が関与
しているから当然でしょうけど、うまいこと考えてあるなぁ、と思います。
  とにかくサークルで数ヶ月勉強して、手話通訳になれるものではありませ
ん。全く手話を知らないような試験官には、名前ぐらい表現できればごまかせ
るでしょうけど。でも、それで職について、本当にろう者にあったらどうする
んでしょう? キャッシュコーナーがわからないぐらいなら、なーんだ、で許さ
れますけど、病院の受付みたいな所で、ろう者が急患でかつぎ込まれてきて
「痛がって、何かを訴えているみたいだけど、この手話わからないなぁ。どう
しようかなぁ。」では、済まさせないわけです。

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  職員の採用については、京田辺市の事例という有名な話があります。簡単に
概要だけ述べますと、京都の京田辺市で手話通訳者を役所に置くことになった
のですが、その選考が役所の人間だけで行われてしまい、どこかの手話サーク
ルからスカウトして採用してしまったそうです。あの人手話ができるみたいだ
から、いいんじゃないって感じで採用してしまったらしいのです。つまり、選
考過程で手話のわかる人が関与していないので、その人がどの程度手話ができ
るか、把握できなかったのです。その結果、京田辺市では、通訳を依頼すると
手話通訳者は来るけど、全然話が通じないということが起き、ろう者が怒りま
して、えらい問題になりました。その後のことは、日聴紙や全通研の報告集な
どで取り上げられていますし、長くなるので、稿を改めます。個人的な感想と
して、私は京都みたいな先進地でも、そんなことが起きるんだなぁ、と驚きま
した。

  さて、石川の場合、推進委員会が絡んでいますから、今回の金沢や松任の採
用もしっかり行われると思いますが、その分、レベルが高くなってしまってい
ることは否めません。でも、石川は人材を育てるのが下手なわけではないと感
じます。むしろ、うまいと思います。人口が100万人程度の県で、手話通訳士
を十数人輩出し、サークルに行けば、地元のろう者と会話できる人がごろごろ
しているというのは、層の厚さを示しています。
  そんな石川でも、いざ手話通訳者として公務員になる人材を募集するとなか
なかいない。そんな所に他県から手話通訳として入っていくのは大変かもしれ
ませんけど、受験資格のある人はどうぞ挑戦してみて下さい。松任で門倉さん
と仕事するのは楽しいと思うし。たぶん。

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  一応、月刊なので、次は9月18日ぐらいに発行する予定です。たぶん、読書
の秋ということで、書籍紹介になると思います。ではでは。

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