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             _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』   _/_/
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No. 76                                              2002年 3月27日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  鈴木宗男議員の話題で事欠かない今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
時事ネタを書くと、いつ原稿を書いているかわかってしまいますね。今回はな
んとか配信の1週間ぐらい前に書き上げました。でも、ちょっと修正が入って
今、辻本議員の進退問題のニュースを聞きながら書き直しています。
  それにしても、あのムネオさんの公共事業の話を聞いていると、なんであれ
が福祉に回ってこないのか不思議です。土木業界も福祉業界もどうせ税金投入
しなければならないのなら、福祉の方がずっと有益ですよね。環境問題なんか
引き起こさないし、なんといっても、誤解を恐れずに言うなら、後腐れなく消
化できるのがいいじゃないですか。道や建物を造るよりも、これからは人に投
資する時代だと思うのですけど。

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  さて、最近、何通かfreeserve.ne.jpのアドレスから、受信できなかった旨
のメールが届きます。利用している人は、ご注意ください。

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  今回のテーマは、何回か宣伝してきた「コンピュータ用語の手話 入門編」
の話です。この本ですが、そろそろ改訂への準備にはいることになりました。
在庫が無くなり次第、品切れになります。買ってくれた皆さん、どうもありが
とうございました。欲しいけど、まだ購入していないという方は、お早めに。
本の見本は次のURLで御覧になれます。

  http://www.kcn.ne.jp/~miskij/c/index.html

  問い合わせは以下までお願いします。
      URL:     http://choukon.jbiweb.com/book3.html
      E-Mail:  csign@anet.ne.jp
      FAX:     020-4668-7396

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  さて、今回の「語ろうか」では、私の、この本への考え方を語ります。とい
うのも、無事に売れたのはいいのですが、少し不満に思うところがあるからで
す。それがなんなのかを、お話します。

  この本は、1996年に出版された「コンピュータ用語の手話」が元になってい
ます。私は、この本に直接関わっていないのですが、聴コン会に関わるきっか
けになった印象深い一冊です。
  日本聴覚障害者コンピュータ協会は、昔、日本聴覚障害者コンピュータの会
という名称で活動していました。名称が変わったのは最近の話で、今度NPO法
人にしようか、という話もあるようです。名称はともかく、昔からかなりハイ
レベルな活動をしているという印象があります。
  その聴コン会に私が関わるきっかけは、コンピュータ用語の手話でした。大
学に入ってから手話を学び始めた私は、自分の専門分野である情報科学、つま
りコンピュータ関係の話を手話でできないものか、と考え出しました。それが
だいたい10年ぐらい前の話で、まだ、パソコンが1台40万円とかしていた時代
で、Macなんかは100万円ぐらいしていました。そしてインターネットが実験的
に日本で使われ始めた頃でした。そんなわけで、しばらく手話サークルに通っ
ていると、広く認知されている手話単語としてのコンピュータ用語が少ないこ
とがわかりました。なぜなら、日常的に誰も使っていないわけですから、「フ
ロッピーディスク」と言っても「何、それ?」という返事が返ってくるような
時代です。

  でも、日本も広いわけですから、どこかにはコンピュータを使っていながら
「手話にも関わっている人がいるだろう」と考えて、そんな人を探し始めまし
た。当時は、まだインターネットが一般的ではありませんでしたが、NetNews
のfjというところで、聴コン会を紹介してもらい、帰省を兼ねて東京までノコ
ノコ出てきて、例会を見学しました。当時、私は、まだ18歳。いやー、私にも
10代の頃があったのだなぁ、としみじみしてしまいます。それで、その時にわ
かったことは、まだ日本でコンピュータ用語の手話をまとめている人はなく、
色々な人が独自に編み出して使っているということでした。ただ、その時には
すでに筑波技術短期大学はありましたから、そこで使っている手話を本にして
まとめようと言う話が進んでいて、それが形になったのが「コンピュータ用語
の手話」です。ちょうど私が聴コン会に出入りする頃に出版されたわけです。

  私は、それからポツポツ顔を出しているうちに会員になり、今回の本では自
らたずさわることになりました。

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  ところで、今回の本は、最終版ではありません。製作した我々としては「ま
ず形にして、世に問う」という姿勢が第一で、これをたたき台にして修正を加
えていこうと考えています。ですから、「これが正しい手話だ」なんて思いこ
んで、一生懸命広めてられてしまうのが、一番怖いのです。それは我々の思う
ところとは、かなり遠くなってしまいます。

  1000円も出して、しかも本の形になっているので、なんとなく正しいような
感じがしてしまうのもわかりますが、我々としては、たくさんの人から意見が
欲しくて、本にしました。
  ですから、この「コンピュータ用語の手話 入門編」は、他の手話単語の本
とは少し性格が違うことをご理解下さい。(とかなんとか言って、表紙に「こ
れがIT用語の手話だ」なんて、決定版のような書き方をしてしまったので、
誤解されちゃうよなぁ、と反省はしているのですが、そのあたりを含めて、
今後修正予定です。)

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  前述した1992年に出版された「コンピュータ用語の手話」は、4500円という
異様に高い定価のためか、あまり世に出ることはありませんでした。本当は
2000円ぐらいで出版する予定だったそうですが、色々な事情があって、こんな
に高くなってしまったそうです。一応、今でも入手は可能です。内容も、それ
ほど色褪せていると言うこともありません。収録単語数も多いですし。ただ、
情報処理試験や、情報工学の専門の講義で使うような単語を中心に載せている
ので、最近のいわゆるITと呼ばれる領域の単語とはかなり違います。今回の
「入門編」では、それをなんとかしたいということで、最近の雑誌に載ってい
るような単語を選んで掲載しています。

 しかし、今回のような専門用語の手話となると、一般の手話単語の本と違っ
て、一つ大きな問題があります。それは、一般に知られている手話表現が無
い、ということです。ですから、作らなければなりません。

  単語を作るというのは、難しい事です。言葉を作るのですから。これについ
ては、色々なとらえ方があるとは思うのですが、私は言語を単語面からとらえ
た場合、次の図式が成り立つと思います。

  内部表現側              外部表現側
              +----------+
 +------+   1 | +------+ | 2   +------+
 | 意味 |-------| 単語 |-------| 表現 |
 +------+     | +------+ |     +------+
              |    |3    |
              | +------+ |
              | | 文法 | |
              | +------+ |
              +----------+

  言語全体を説明するには、色々な表現方法があると思いますが、今回は単語
という側面からだけで、この図を考えてみました。

言語というものは、文法と組合わさって基本的な枠組みができていると思いま
す。単語は、この世のあらゆる事象や事物の意味を具体的な記号として表現し
ます。話し手にすれば単語は意味の弁別要素であり、受け手にすれば単語は解
釈の識別の手がかりであります。ですから、意味と表現にぴったりとくるよう
な単語表現である必要がありますし、ぴたっとこないと、文法ともかみ合わず
に、この枠組みが崩れてしまう。でも、その判断はなかなか難しいものがあり
ます。一番手っ取り早いのは、手話をずーっと使っているネイティブの人に判
断してもらう方法がありますが、今まで「語ろうか」でも何回か話題にしてき
たとおり、手話と言っても色々ありますし、それから個人差もありますから、
「絶対これ!」というようにビシッと決めることは、ほとんど無理です。

  少し望みがあるとすれば、今回決めたいのは専門用語なので、1つの表現に
対応する意味が少ない(だいたいは1対1)なので、あまり文法などは考えなくて
もよさそうということはあります。例えば、普通の手話単語ですと、「走る」
という単語を考えると「人が走る」「自転車が走る」「車が走る」「雷が走
る」「衝撃が走る」という具合に、「走る」自体が色々な意味を持っており、
それぞれに手話表現が違ったりします。しかし、専門用語ならば「キーボー
ド」はキーボードであって、それ以外の何者でもない。楽器の鍵盤キーボード
ではなく、文字を入力するためのキーボードとして特定されます。「打つ」と
言えばキーを入力することだと特定できます。ですから、意味との関連を持ち
つつ、表現を考えればいいという点で、だいぶ楽です。でも、時々、そうでも
ない例があるんですよね。例えば「開く」。「ファイルを開く」「ウィンドウ
を開く」は、異なる動作ですけど、同じ「開く」という単語を使っています。
  
  そんなわけで、かなり職人的で、主観的な作業が必要なんですが、私はあん
まりそういう作業に向いていないし、そもそも手話がそれほどできるわけでは
ないので、単語の日本語解説文を担当しました。最後になって、かなりサボっ
てしまって、修正作業を他の人にお任せしてしまったりしていますので、全部
私の仕事というわけではないのですが、単語の解説文には責任を持ってやって
います。それで、手話表現の部分ですが、私は「そりゃ、違うだろ」と思った
とき以外は、口を出していません。だから、全く責任がないかというと、そん
なわけはありませんけど、いまいち、手話の方は自信がないというのが正直な
ところです。

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  それで、是非、この本を購入したり、それ以外でも読む機会があった人にお
願いしたいのは、この本に載っている手話表現のチェックや身近でもっと良い
表現を使っている場合には、我々にそれを是非教えて欲しいのです。

  ということで、内部で議論していたときに、出てきた問題点をいくつか上げ
ますので、これについて意見があれば、是非是非、お寄せ下さい。

- 物理的な物に対する統一が必要ではないか?

  ケーブル、回線、コネクタなど、つながっている物に対する表現は統一して
おいた方がいいのではないか、という話です。今はかなりバラバラです。バラ
バラであることにも意味があると言えば、あります。「回線」は「つなぐ」こ
ともあるし、「切られる」こともあります。「ケーブル」も「つなぐ」ことは
ありますが、「切る」とか「切られる」ことはめったにありません。でも、「
つなぐ」という意味では統一した方がいいかなぁ、とも思います。

  類似語同士の関係もどうしようか、と言う話もあります。例えば「ブロード
バンド」は広帯域の「回線」ですが、「回線」という手話とは全く違う表現に
なってしまっています。このあたり、今は結構ごちゃごちゃしているのですが
それぞれベストを尽くして考えた結果だし、また改めて考え直すのも大変だ
ねぇ、という状態です。ということで、手伝ってくれる方は、大歓迎。

- 全日本ろうあ連盟の手話研究所が考えた表現と異なるのはどうする?

  有名なのは「デジタル」ですね。1992年の「コンピュータ用語の手話」の時
点で、我々は人差し指を上下させる表現を発表しているのですが、なぜか後発
の手話研究所が出版した「新しい手話」にはゼロ、イチ表現(我々は「オヒオ
ヒ」なんて言ってますが)のデジタルという手話が載っていました。最近でも
「光ケーブル」という例があります。

  連絡不足ということなのかもしれませんけど、前の本では全日本ろうあ連盟
の推薦文ももらっていますから、知らないはずはないんですよね。あえて無視
したのか、よく理由はわかりませんけど、とにかく違う手話が発表されてし
まっています。
  「こちらは専門用語。あちらは一般用語、として割り切ろう」なんて話もあ
りますが、統一していれば、それに越したことはないと思っています。このあ
たりは現在、協議しようか、という段階です。ただ、こちらの不手際があり、
協議は難航中ですが、これはなんとかします。

  ちなみに「デジタル」と「アナログ」、「シリアル」と「パラレル」は聴コ
ン会内部では、すごい自信作なんです。この4つは変えたくないなぁ、という
のが私の気持ちです。

- 指文字を取り入れた表現って、どうでしょ?

  ちょっと前は「新しい手話」というと、指文字を組み合わせた物が多くて、
「病気」+「え」で「エイズ」とかあったのですが、「エネルギー」になると
「冗談もほどほどにしなさい」って感じで、あまり評判が良くなかったようで
手話研究所の方で、指文字表現はあまり使わないようにする、ということに
なっているそうです。

  コンピュータ用語の手話の場合、英語の指文字を取り入れた表現をよく使っ
ています。「CPU」や「TA」は、指文字そのまんまです。「アクロバット」は
よくよく見てみると、意味不明です。「USB」なんて傑作もありますが、なか
なかうまい表現がないのが現状です。へるぷミー。

- どこまで冗談ぽくっても大丈夫なのか?

  「IT」という手話が決まるまでに、面白い話があります。当初、我々は、
「I Love You」のような人差し指と小指を立てて、それにTの字を組み合わせ
る表現を考えたのですが「そりゃ、あんまりにもふざけ過ぎて、相手にされな
いよ」という意見が多くて、却下されたんです。もっとも私は「ITなんて言葉
は森総理と共に無くなるはずの単語だから、冗談でもいいじゃん」と主張して
いましたが、それほど我々は「IT」という言葉を馬鹿にしていましたし、扱い
は適当でした。結局、日本式英語指文字の「I」+「T」に決まりました。

  その後、なぜか「IT」が流行語にまでなり、さらに驚いたのは、新潟の全国
ろうあ者大会で、全日ろう連の理事長が、あの冗談で作った「IT」を表現した
んですね。いやー、びっくりしました。どこで、漏れたんでしょうか? それと
も独自に考えたのでしょうか? 流行語だし、こりゃ、あちらにあわせた方がい
いだろう、ということで、我々は慌てて原稿を差し替えました。

  そんなわけで、手話の表現を決めるのはとても難しいです。そのさじ加減が
微妙なんですよねぇ。

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ということで、我々は「コンピュータ用語の手話 入門編」を元に広くご意見
を募集していますので、どうぞ、よろしくお願いします。ご意見は、E-Mailの
場合は、csign@anet.ne.jp まで。あとは、研究部の例会に参加してもらっ
て、直接意見する方法もあります。詳細は聴コン会のページをご覧下さい。掲
示板もあります。
  http://choukon.jbiweb.com/index.shtml

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  次回は、ちょっとお休みさせてもらうかもしれません。
  では、また来週。

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