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             _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』   _/_/
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No. 73                                              2002年 2月27日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  皆さん、こんにちは。

  先週、ちょっとへばって弱気なことを言ったら、激励のメッセージをいくつ
かもらいまして、感謝感激しています。どうもありがとうございます。皆さん
から「のんびりやってください」と何ともありがたいメッセージを沢山頂きま
した。お言葉に甘えて、しばらくのんびり続けますので、今後とも、ご意見、
感想、文句、提案などなど、どうぞよろしくお願いします。

  今回は、ご意見メール紹介の予定でしたが、ここ何週間の未読メールに埋も
れて、その発掘作業が思ったより大変だったので、予定を変更して、本の紹介
をします。最近、注目の手話の本が発売されたり、先日の全通研討論集会でも
かなり買い込んだので、それとあわせて、今後の「語ろうか」で話題になるよ
うな本を紹介することにします。ついでに、Yahooのサイトも載せますので、
Webを使って本の表紙を見たり、そのまま注文したりできますので、もし、興
味があれば事前に読んでみて下さい。

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はじめての手話
  木村晴美・市田泰弘/著 (日本文芸社、1200円+税)[ISBN: 4-537-01738-4]
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=19502081
1995年4月発行

  国立リハビリテーションセンター(略称:国リハ)の木村先生と市田先生によ
る手話入門の本です。この本が発行された当時は、手話の入門書の発売ラッ
シュで「楽しい手話」とか「初めての手話」とか「やさしい手話」といった本
が本屋に並んでいたものです。「はじめての手話」というタイトルでは数種類
あって、すごく混乱したように思います。そんな中で、この本が異色だったの
は、最初に延々と「日本手話」について、そして日本語対応手話(この本では
シムコムと言っていますが)のことを述べていた点です。手話が言語であるこ
とをこれでもか、ってぐらい強調し、手話には文法があること、日本語とは異
なること、表情も含めて手話であることなどなど、この頃の日本手話の話の盛
り上がりがわかるような解説文が最初の章に載っています。そして、表情の大
切さから、手話の絵は、写真を元に描いたかなりリアルな絵が使われていまし
た。今までの手話の本の絵がマンガとすれば、これは劇画。話者の顔のしわま
でわかるような感じです。(実際は、若い人ばかりがモデルになっているから
顔のしわなんてありませんけどね。)

  日本初の言語学的な方向からの手話学習本というふれこみでしたが、今にし
て思うと、少し大げさだったような気はします。最初の解説が言語学からアプ
ローチしているだけで、本のほとんどの部分は、今も昔も主流を占める会話文
の表現方法でしたから。
  でも、この本をきっかけに、日本手話やらの議論が巻起こったのは事実で
して、日本の手話業界には、歴史的にとてつもなく大きなインパクトを残した
本です。

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ろう文化
  現代思想編集部/編 (青土社、1900円+税)[ISBN: 4-7917-5803-X]
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=30665791

  本書は2000年4月発行ですが、元は「現代思想」という雑誌の特集号で、そ
れが単行本になったものです。「はじめての手話」が発売されてから、日本手
話という考え方が大変な議論になり、Dproという団体が「ろう文化宣言」を発
表します。ろう者には独自の文化がある、とぶちあげたのです。その集大成が
現代思想で特集として取り上げられ、この本になったというわけです。
  中身は、いわゆる文系の論文の集まりですが、そう難しい単語が使われてい
るわけではないので、いつもの「現代思想」に比べて楽に読めます。それから
Dpro関係者だけではなく、色々な人が書いているので、当時の議論の盛り上が
りを実感できる本でもあります。とにかく、この本の最初にある「ろう文化宣
言」は、あちこちで引用されているので、一度は読んでおきたいものです。

  ただ、かなりいっちゃった部分もあって、ろうの芸術は健聴とは違うという
ことで、いくつか絵が載っていたりもするのですが、私にはいまだに何が違う
のかわかりません。まぁ、芸術方面にかなり疎い私ですから、わからなくても
当然かもしれませんが、そんな気になる部分はいくつかあります。
  さて「ろう文化」という言葉が、最初の雑誌形態で発売された時に、かなり
の盛り上がりを見せたのですが、この単行本が出る頃には、今のように、まぁ
普通になったというか、あまり話題にならなくなったというのが、私の印象で
す。

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手話の世界へ
  オリバー・サックス/著、佐野正信/訳 (晶文社、2039円+税)
  [ISBN: 4-7949-2525-5]
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=19696345

  時間的には、これが一番最初だと思うのですが、訳本なので発行が後になっ
ています。手話が言語だという話を丁寧に解説した本で、著者のオリパー・
サックス氏は精神や心理学関係の解説本で有名な人です。この人は手話につい
て全くの門外漢の状態から、手話のことを書いているので、かなり客観的に述
べているところが、他の手話の本と一線を画していました。

  だいぶ後になりますが、日本人が書いた類書があります。

もうひとつの手話 ろう者の豊かな世界
  斉藤道雄/著 (晶文社、1900円+税)[ISBN: 4-7949-6395-5]
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=30548002

  こちらはテレビ関係者が書いた本で、ドキュメンタリーを作る過程で知った
手話の世界を書いています。こちらも元々手話を全く知らない人が書いた本な
ので、ある程度客観的です。ただ、ろう文化宣言の後で、Dproが取材の対象に
なっていることもあって、そのあたり、少し力が入りすぎている感じもします
が、さすがにテレビのドキュメンタリーを作る人の目は冷静だな、と思わせる
部分があります。特に「手話は言語か」という節は、ほとんど私と同じ意見な
んで、メルマガが停滞している今、待ちきれない人には、この本をお勧めしま
す。

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実感的手話文法試論
  松本晶行/著
  (全日本ろうあ連盟出版局、2500円+税) [ISBN: 4-915675-70-X]
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=30872335

  これは最近の本。著者の松本先生は聴覚障害を持つ弁護士です。手話業界で
すごい有名人です。内容は、手話をほぼ網羅的に形態分類し、文法の解説を試
みたもので、今のところ、一番役に立ちそうな手話の文法書です。言語学者で
はなく、弁護士から出たというのが、なんともこの手話業界の複雑さを象徴し
ているような気がします。

  実は私は熱烈な松本ファンでして、サイン本をもらうために、次の本を2冊
買ってしまったぐらいです。松本ファンには見逃せないのが、この1冊。

ろうあ者・手話・手話通訳 
  松本晶行/著
  (文理閣、1700円+税) [ISBN: 4-89259-285-4]
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=28314291

  これは全通研の研究誌に連載されたものをまとめたもので、ろう者や手話通
訳をテーマにしたエッセイです。

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手話通訳がわかる"本"
  伊東雋祐・小出新一/監修 全国手話通訳問題研究会/編集
  (中央法規出版、1800円+税) [ISBN: 4-8058-2104-3]
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=30875287

  これはまだ昨年発行されたばかりの全通研の本です。手話についての全日本
ろうあ連盟と全通研の公式見解が載っているような感じですね。タイトルの通
り、手話というよりも「手話通訳」について解説されていますから、制度や通
訳になる方法、労働問題などが扱われています。表紙のほんわかした雰囲気で
読み始めると、かなり意表をつかれます。ある意味、全通研や全日ろう連の思
想を体現したような本です。

  私もまだ読み込んではいないのですが、現在の手話通訳制度について、きっ
ちりまとめられている点で、この業界に就職したい人にはお勧めです。それと
手話通訳者を支える人にもお勧めです。

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手話ということば もう一つの日本の言語
  米川明彦/著
  (PHP研究所、660円+税) [ISBN: 4-569-61965-7]
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=30926694

  これはピカピカの新刊。今年になってから出た本です。米川先生は、全日本
ろうあ連盟から出版されている「日本語-手話辞典」の編纂にも関わった言語
学者です。
  この本は、手話についての歴史やそれを取り巻く状況などが網羅されている
ので、手話そのもの以外のことを知るのに、大変手頃な1冊です。文庫本だか
ら、気軽に読めますし。私としては、この本のおかげで、沢山の文献をひっく
り返さなくても「語ろうか」の原稿が書けるという恩恵にあずかっています。
それに、今まで存在しか知らなかった文献の一部分を垣間見ることができるの
もありがたいです。

  とにかく、最近の手話事情については、この「手話通訳がわかる本」と「手
話ということば」の2冊を読めばOKという状況になったことは、初心者にとっ
ては嬉しいことです。昔と比べて、ずいぶん恵まれていて、羨ましいなぁ、と
思います。

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  最後に紹介するのは、趣味の本。
  たまに「語ろうか」の中に出てくる計算機や人工知能、自然言語などの面白
トピックスが網羅された本です。

ゲーデル、エッシャー、バッハ あるいは不思議の環
  ダグラス・R・ホフスタッター/著 野崎昭弘[ほか]訳
  (白揚社、5500円+税) [4-8269-0025-2]
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=03280104

  たまに「語ろうか」に出てくる小難しいというか、突飛なトピックス、例え
ば「知らないことを知ることはできない」という計算機の理屈といったことが
すごく面白い読み物として読めます。でも、とても分厚いので読み通すのは大
変かもしれません。

  ということで、もっと薄手で楽に読める本なら、最近文庫で以下の本が出て
います。

ロボットの心 7つの哲学物語
  柴田正良/著
  (講談社、680円+税) [ISBN: 4-06-149582-8]
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=30920526

でも、WWWが使えるのなら、以下のURLの方がお手軽ですね。
  量子論と複雑系のパラダイム
  http://kamakura.ryoma.co.jp/~aoki/paradigm/paradigm-web.htm

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  ということで、今回の「語ろうか」はここまで。
  では、また来週。

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