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             _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』   _/_/
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No. 72                                              2002年 2月 6日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  皆さん、こんにちは。

  いよいよ今週末は全通研の討論集会ですね。福島はヨークベニマルの本拠地
ということで、とても楽しみなのですが、本業が多忙を極め、来週の「語ろう
か」も休刊かもしれません。先に謝っておきます。ごめんなさい。

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  先週の「語ろうか」では、個人のケンカや見栄から、手話サークルのいざこ
ざになる様子を取り上げたのですが、今回は純粋な運営の問題点を取り上げま
す。
  今回の原稿はちょっと練れていないなぁ、と思うのですが、ある種、私の到
達点が示されている重要な原稿と考えています。

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  もう、昨年の話ですが、私の所属している全通研支部と県ろう協が共催して
大会を開くことになりました。形式から仕切り直しと言うことだったので、分
科会を設けてもらい、その中に「手話サークルとろう協の関わり」というテー
マで手話サークルの運営の問題点を話し合うようにしました。討論集会のよう
な場になると、理念とか介護保険とか、すごく大きなテーマになってしまうの
で、もっと身近な、例えば先週の個人的なケンカがサークルの運営に悪影響が
ある場合に、どうしているか、というようなことを話し合いたかったのです。
これはかなり、私の思惑通りになり、色々出てきました。先週の話も一部は、
この大会で出てきた意見です。

  それを通じて強く思ったことは、先週の個人のケンカが団体の関係までやや
こしくさせるということと、サークルのあり方と運営方法です。

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  「サークルのあり方」については、全日本ろうあ連盟からも文書が出されて
いて、それは「語ろうか」のNo.23,24,26でも紹介しましたし、ある程度の方
針みたいなものが、皆さんの頭の中にあると思います。でも、私がその分科会
の司会をやりながら思ったのは、もっと漠然としたもので、しいて言えば「手
話サークルの社会的意義」でした。

  手話サークルは自発的に手話に関係したい人が集まる団体で、「社会的には
必要とはされていない」けれど、「特定の人に強い期待を持たれている」団体
です。これが一番の特徴なのではないかと私は思います。社会一般的に見て、
地域に根ざした団体、例えば、PTA、消防団、町内会などは社会的な必然や必
要性があって形成されていますから、潰れるということ自体が論外です。公民
館で活動している団体、例えばダンスサークルや英会話教室、陶芸サークル、
将棋囲碁、お花、お茶の集まりは、参加者の意志があれば続きますが、飽きた
り、必要性が無くなればそれまで。でも、特に誰かが困るわけではありませ
ん。そんな風に見ていくと、手話サークルに近い活動形態を持つ団体として、
ボーイスカウトやガールスカウトがあげられると思います。自分も昔、ボーイ
スカウトに所属していましたけど、あの団体の目的は自己研鑽。あってもなく
ても誰も困らない。だから、社会的な存在意義としては、かなり不安定なもの
です。手話サークルも、社会的に見たら、あってもなくても困らない、とても
不安定なものだと思うわけです。

  だから、運営を続けるには、それなりの目的を持ち、続ける意志を持たない
と、なくなってしまう、潰れてしまうのは自然の摂理です。ですから、手話
サークルの問題とは、この目的の不明確な団体をいかに維持していくか、とい
うことに言い換えられると思います。

  と、ここまでくると、かなり反対意見もあるでしょう。いくつか順番に見て
いきます。

  まず、「目的が不明確と言うことはない。会則には目的の項目がある」とい
う意見はあるでしょう。でも、会則で決まっている手話サークルの目的は、か
なり抽象的ではありませんか。聴覚障害者を理解するとか、交流するとか、福
祉向上のために活動するとか。具体的にどうしろ、と書いていないので、自由
に活動はできますけど、それは逆に言えば、なんもしなくても構わないという
ことでもあります。私のように、今までレールの上に乗った人生を歩んできた
者には、これはかなりの難題です。とても、あの会則のようなものが、行動の
手順とはならず、何をどうしていいのかわからない、つまりはないも同然なわ
けです。

  「手話サークルがなくなれば、ろう協は困る」という意見もあるでしょう。
これは私も強調したいところなのですが、しかし、社会全体から見ると、聴覚
障害者の人数はわずかですから、手話サークルがなくなっても、日本の(別に
どこの国でもいいのですけど)社会全体としては困らない、ということを私は
言いたいわけです。しかも、聴覚障害者は他の障害者に比べて、就職率は良く
福祉年金に頼らなくてもいい人もかなりいます。そう言う中で、あえて聴覚障
害者に対して、福祉向上の名目で動く必要性があるのかどうか。もっと先に考
えることがあるだろう、なんて言われたら、どうにも反論できないわけです。

  ということで、非常に理屈で考えると、手話サークルなんて無くてもいい
じゃん、という結論が出てしまいます。それは私としても「何か変だ」と思い
ます。で、ここに何かの理屈を作る必要があるわけです。理屈と同時に、今の
サークルが抱える問題に帰着して、改善する手段まで発見できれば、さらに良
いというわけです。

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  少し昔のことを考えてみましょう。私が手話を学び始めた石川県で、最も古
い手話サークルは金沢市にある「あての会」というサークルです。このサーク
ルが発足したのは、ある聴覚障害者の体験に基づいています。30年ほど前、そ
の女性は風邪になった子供を医者に連れて行ったのですが、薬をもらって帰る
時、医者に「今度来る時は、話の通じる人と一緒に来てください。」と言われ
たそうです。その女性は、とても悔しくて悔しくて、耳が聞こえない自分に何
ができるのか、と自問自答を繰り返したそうです。そんな時、金沢大学の学生
との交流が始まり、手話サークルが始まったそうです。

  しかし、そのような古き良きサークルの時代は終わろうとしています。今、
手話サークルができるきっかけで最も多いのは、初級手話講習会が終わった後
の人たちが集まったり、手話に興味のある人がたまたま居合わせたから、とい
うものです。ここには、聴覚障害者を抜きにした手話サークルができるのは自
然の成り行き。成立段階から、昔の手話サークルとはかなり状況が違います。

  だからといって、既存のサークルが違うかと言えばそういうわけでもありま
せん。サークルとしては歴史があるのかもしれませんが、中身はどんどん変
わっています。経験的に皆さんご存じの通り、1年以内に辞める人が多く、そ
れ以上続いても、5年もすればサークルのメンバーはすっかり様変わりしてい
ます。このような状態では、初級講習会後のサークルと何ら変わるところはあ
りません。

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  そこで、私は割り切りました。サークルの目的は適当でいい。要は、理念あ
る人がいかに続けられるか、だと。目的、理念、目標、言葉はなんでもいいの
ですけど、それは個々人で掲げれば十分。サークルは、それを支える活動体と
して存続すればいい。問題は、いかに長く存続するかにあります。それは運営
の問題に帰着できるわけです。

  最初の私の県での大会の話に戻りますが、手話サークルが抱える悩みは、ど
こでも、いつでも似たようなものでした。

  - 役員のなり手がいない
  - 会員数の減少と増加の繰り返し
  - 中級者の受け皿問題

  つまり、サークルの存続問題なわけです。

  今回の「語ろうか」は、摩訶不思議なタイトルがついていますが、私が到達
した結論が、これなのです。脇役ではダメだと。お客様意識で参加していては
ダメだと。理念、目標、目的、なんでもいいのだけど、自分なりに何か意義を
持って、進んで参加しなければならない。自分が主役で活動するべきだという
ことです。これには、手話の上手下手、経験年数、知り合いのろう者の数は、
活動の助けにはなっても、どれかが欠けているからといって、致命的なわけで
はありません。早い話が「手話が下手でも、役員をやれ。」ということです。

  所詮、職業としての手話通訳者でもなく、興味で手話サークルとして活動し
ている以上、自己満足か、やむをえずか、どちらにしても、普通から考えたら
どうしようもない動機でやるしかないと思うのです。

  それぞれがテーマを見つけて、活動する。手話サークルはそんな場であるよ
うに思いますし、そんな場であって欲しいです。その目的が幸運にも社会福祉
の一端を担えれば、それはそれでいいだろうし、ろう者の知り合いが増えるな
ら、それはそれでいい。手話サークルは、そのための手段であるし、それぞれ
がまちまちの理念や目的を持った人達の集まりで、たまたま「手話」というこ
とだけでつながっているにすぎない。だから、どんどん自らの思う道を突き進
んでみましょう。そのためには「どうせやるなら、役員」です。役員になれば
情報が入ってくる、入るように努力しなければならない。そうすればあたなの
世界は変わります。共にサークルは変わります。楽観的かもしれないけど、単
なる理想論とは思いませんよ。私は。「どうせなるなら、役員」。その覚悟で
手話サークルを続けるべし。それが私の結論です。

  文句を言う前に、自分で動くべきだと思います。自らが動かなければ、ダメ
だと思います。ドイツの詩人、ベルトルト・ブレヒト(BertoltBrecht)は、こ
んなことを言っているそうです。「英雄のいない時代は不幸だが、英雄を必要
とする時代はもっと不幸だ。」不幸なことに、手話サークルには英雄が必要で
す。でも、それは皆さん個人個人、それぞれが英雄であることなんだと思いま
す。

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  それができたら、役員のなり手がいない、とか、会員数の減少と増加の繰り
返し、なんて問題は自然消滅です。なぜなら、役員は皆さんがやる気満々なわ
けだし、会員も減らなくなる。(必ず増えるとは言いませんけど...)それに、
自分がやりたいだけやるのですから、サークルの規模なんて関係ないじゃない
ですか。それから、中級者の受け皿問題。自分がやりたいことをやるのですか
ら、「受け皿」なんて消極的な考え方は消えるはずです。中級ならなおのこ
と、自分で探せよって思いません?

  とはいうものの、今は総合教育の受け入れとか、介護保険の見直しとか色々
な問題があるのは事実です。でも、まず、これまで述べてきたとおり、足場を
固めてから、もっと大きなこと、高尚なことに取り組めばいいんじゃないかと
思います。今では、FAXやらE-Mailができて連絡は楽になったし、手の届く範
囲でベストならいいじゃないですか。楽観的かもしれませんけど、気長に手話
サークルをやっていきましょうよ。

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  来週は休刊かもしれない。でも、また来週。
  福島の討論集会に来る人は連絡下さい。生の声での意見を聞きたいです。ど
うぞ、よろしく。

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