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             _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』   _/_/
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No. 71                                              2002年 1月30日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  皆さん、こんにちは。
  今年は大雪のようで、千葉でも雪が降るかもしれないぐらい今週末は寒かっ
たです。結局降りませんでしたが。いつも大学入試の時は雪などで天候は悪い
ような気がします。
  大学入試と言えば、今年のセンター試験は色々と趣向を凝らしたものが多
かったようで、理科ではドラえもんが、英語ではイギリス手話が題材として取
り上げられています。

河合塾のセンター試験問題のページ

理科
 http://www.kawai-juku.ac.jp/nyushi/center/02/index.cgi?s=450&p=12&d=1
英語
 http://www.kawai-juku.ac.jp/nyushi/center/02/index.cgi?s=110&p=14&d=1

「語ろうか」のNo.3「手話を初めて学ぶ人へ」を読んでいた受験生は、ちょっ
とは英語も楽に解けたかも?? もっとも、問題そのものは難しかったような気
がします。私は先週述べたとおり、入試が嫌で、特に英語の成績は最悪だった
ものですから、たぶん今年の英語のテストを受けても、ろくな得点は取れな
かったでしょう。でも、そんな私でも教育実習に行って先生のようなことをし
たり、大学院まで行って研究活動をしたのです。今年、受験生である皆さん、
センター試験の結果が悪くても、気にせず、今後の試験に前向きに取り組んで
みましょう。入試の時に多少悪い成績でも、後でいくらでも挽回できますよ。

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  さて、今回は全通研討論集会を目前に控えていることもあり、久しぶりに手
話サークルの話をします。もっとも、討論集会には色々な分科会があるので、
皆さんが手話サークルの話をするわけではないのですが、私はいつも討論集会
では、「手話サークル」の分科会に参加するので、「討論集会 = 手話サーク
ル」というイメージが強いものですから、ご了承下さい。

  私は、手話サークルは手話の学習の場であり、健聴者と聴覚障害者の交流の
場であり、ろう運動の場である、と考えます。全てを満足させるには、かなり
厳しいことはわかっていますが、最初から諦めては何もできませんし、できる
ことなら、どれも目指したいのです。しかし、そんな目標を目指す以前の問題
として、様々なごたごたが発生します。手話サークルに限ったことではないの
かもしれませんが、それにしてもなんで手話サークルで、こんなことが起きる
かなぁ、と悔しかったり、不思議だったり、怒り爆発だったり。特に個人的な
ケンカには、よくうんざりさせられます。今日は、そんなことを語ります。

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事例1: 人口20万人規模のある市での話。

  手話サークルは15年ほど前に発足。きっかけは、ろう協による初級手話講習
会の卒業生が、今後も手話を学んでいきたいと言うことで、講習会がそのまま
手話サークルになった。なかなか熱心な人も多く、他の地域に学びに行った
り、全通研に加入する人もでるなど、健聴者は手話サークルを無難に運営して
きた。
  しかし、5年ほど前に、手話サークルの会長とろう協の会長が喧嘩して、手
話サークルとろう協は分断状態になってしまった。ろう者の中には、個人的に
手話サークルに来てくれる人もいたが、他のろう者から、後ろ指を指されるこ
ともあり、だんだんと手話サークルは健聴者だけの団体になってしまう。
  そして、2年前、ろう協は「手話勉強会」という団体を作り、初級手話講習
会修了生を、そこに入れるようになった。手話勉強会は純粋に手話の技術的勉
強だけを受けるような状態で、手話サークルからはもちろん、一部ろう協の会
員にも疑問の声があがるが、ろう協の役員は聞く耳を持たず。勉強会参加者は
状況がつかめていないので、問題意識もなく、通っており、しかも、ろう協に
よりブロックされているので、手話サークル会員が接触しようとしても、でき
ない状態。今でも手話サークルとろう協は分裂状態。分裂のきっかけになった
時の手話サークルの会長はすでに活動から遠のき、残された手話サークル会員
としても、どうすれば元に戻るのかわからない状態。

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事例2: 東京のある市の話。

  地域のろう協がなく、行政主催の手話講習会の修了生が手話サークルの会員
になるような状態が続いている。ろう者はいるが、人数が少なく、ろう協を作
ろうと意見を束ねるような人もいないらしい。
  そんな中、手話サークルは市内に3つある。そのうちの1つのサークルで問題
は起きている。このサークルの古株会員であるAさんは、創立当時からの会員
で、市の初級者講習会にも深く関与しており、この地域では誰も口出しできな
いほどの存在となっている。ただ、性格に難があり、「これからは若い人に任
せた」という割には、何かにつけて文句を言う。
  事件が起きたのは、手話通訳の派遣制度がきっかけ。都から指導があって市
がなんとなく派遣制度を作ったらしい。でも、市には通訳者養成講習会を開く
つもりもないので、都の通訳者講習を終了した人が登録してください、といっ
たような状態。しかし、これは重要なことだから、と、当時の手話サークル会
長が説明会を企画した。市役所から福祉課と社協の担当者を呼び、手話通訳を
付けて、ろう者に派遣制度を説明するというものである。その時、うちのサー
クル会員では手話通訳をすることは難しいと考え、登録手話通訳者を呼ぶこと
にした。それでやってきたのは、別の手話サークルの会長だった。
  これに、Aさんはへそを曲げた。○○流の踊りの教室に××流の師匠が来て
教えているようなものだ、恥ずかしい、恥だ、とわめいた。周りから見ていた
ら、この説明会が、Aさんに通訳の依頼が来なかったことを不満に思っている
のは一目瞭然だった。
  しかし、一事が万事そのような調子で、「これからは若い人に任せた」と言
う割には、何かの時には口を出し、情報も自分のところでストップされてしま
う。そして、何かを聞いても「わからないなら自分で考えろ」「ろう者のこと
を考えればすぐにわかる」といった返事しか返ってこない。
  昨年、手話サークルの役員がごっそりと隣のサークルに移動してしまった。
なんとか、新しい役員体制を作ったが、新会長もAさんからの吊し上げ状態。
いっそ、サークル全員で隣のサークルに行きたい気分だが、地元のろう者のこ
とを考えると、そうすることもできず、現会員の気持ちは憂鬱である。

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事例3: ある地方都市の話。

  手話サークルは創立されてから20年ぐらい。でも、当時のメンバーは諸般の
事情で、すでに全員退会してしまい、今は一番ふるいメンバーでも手話を学び
始めて10年目ぐらいである。サークルに来てくれるのは、ろう協で手話対策部
の肩書きを持つBさんで、毎週とは言わないまでも、かなりの頻度でサークル
に来ており、手話サークルの会員から見ると、ろう協の代表はBさんのような
状態だった。しかし、ろう協は会長としてCさんがいて、Bさんはその中の手話
対策部という一員でしかない。
  そんなとき、BさんとCさんが個人的な喧嘩を始めてしまう。手話サークル、
そして、ろう協の会員もオロオロするばかり。ろう協の中で絶大な権力を持つ
Cさんには誰も口を出せないし、Bさんの今までの功績を考えれば、心情的には
Bさんの肩を持つ人が多数。しかし、喧嘩の溝はますます深まるばかりで、つ
いには手話サークルとろう協を巻き込んで、Bさん派とCさん派の形式にまで発
展。いつの間にか、手話サークルがBさん派にみなされてしまい、ろう協とは
断絶状態になってしまう。

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事例4: 人口の少ない地方の話。

  手話サークルができた年はわからないが、1990年頃にはあったと言われてい
る。人数は10名前後で、毎年かなりの人がいなくなるが、初級講習会が毎年行
われているため、かろうじてサークルとしての形をなしている状態。ろう者の
Dさんは、なかなか通訳者が育たない状態にストレスを持ちながらも、根気よ
く手話サークルに通っていた。
  そんな活動熱心なDさんなので、県レベルでも色々な仕事を任されることが
多く、Dさんは手話サークルと県レベルでの活動の両方を一生懸命こなしてい
た。しかし、なにぶん、県レベルの仕事は、ろう協の新聞でも大きく取り上げ
られるので、地元ろう協ではDさんのことを疎ましく思うような雰囲気があっ
たようだ。
  そんなとき、手話サークルがいつも使っている公民館で、利用者数の少ない
ことを理由に、部屋の貸し出しを少なくすることを通告される。当時の手話
サークルのメンバーは色々さがした結果、図書館の一部を借りることになった
が、ここがDさんの家から少し遠いところにあった。これをきっかけにDさんの
足も手話サークルから遠のき、手話サークル会員は地元ろう協に協力を要請し
たが、元々手話サークルとの活動が薄いためか、ろう協会員の動きも鈍く、そ
のうち手話サークルの会員は激減。2年後ぐらいに手話サークルは自然消滅し
た。

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  4つほど事例を紹介しました。多少削っていますが、全て私が見聞きしたも
のです。つまり、本当にあったことばかりです。

  よくありがちなのが事例1や3のような場合で、熱心に教えてくれるろう者が
ろう協から孤立してしまうというもの。原因は個人的な喧嘩である場合が大部
分で、大なり小なり、よく聞きます。現在進行形の話も多いので、都道府県名
でさえ出せないものばかりですので、ここでもそれぞれの事例については、こ
れ以上深く述べませんので、ご了解下さい。

  喧嘩自体は、別にろう協や手話サークルに限った話ではなく、どこにでもあ
りますが、なんで個人的な喧嘩が手話サークルやろう協を巻き込んで、状況を
複雑にしてしまうのかを、とても悲しく思います。それと、こういう話は、話
題にすると、すぐにどこそことバレてしまうので、具体的な問題としての討論
のネタには、なりにくい。だから、全通研でもあまりテーマとして取り上げら
れることは少ないのですが、実は手話サークルの存続に関わることで、手話の
勉強とか、聴覚障害者の理解とか言う前に、もっと重大な問題です。それなの
に、この問題に対する認識が甘いとか、特効薬が見つからないことにも歯がゆ
さを感じます。

  皮肉な言い方ですけど、よく言われることに「手話サークルは、手話の技術
だけを勉強する場ではない」というのがあります。私は技術の勉強も大事だと
思うのですが、技術以外で大事なこととすると、もしかして、手話サークルを
いかに存続させることなのではないか、なんて思ったりもします。聴覚障害者
の理解や、ろう運動なんて、サークルがなければ、できない話なんですから。

  幸か不幸か、私は手話を勉強し始めて、まだ10年ちょいですが、こういう事
例を効率よく見たり、聞いたり、体験してきました。逆に、とてもうまく手話
サークルが運営できているところも見てきました。何が違うのか? 少しその条
件を挙げてみます。

 - ろう協とのコネクションが複数存在する。
     一般には、ろう協の会長や対策部が手話サークルの役員と公式につな
   がっていますが、それが1つだけだと、トラブった時に、修復不可能になり
   ます。個人的な関わりで構わないので、複数のつながりがある手話サーク
   ルは生き残ります。
     ろう協と全く関係なく手話サークルが存在できるのではないか、という
   意見もあるかもしれません。が、これは私の経験から言って無理です。ろ
   う協とさえつながりがもてないサークルは、他の団体とつながりを持つこ
   とも難しく、特殊な場合(例えば大学や病院内サークルとか、重複障害との
   関わりで手話を扱うサークルなど)を除いて、手話サークルが単独で存続す
   るのは相当困難です。そして、内にこもって、仲間内だけの団体というの
   は、外から見ると、無きに等しいわけです。それでいいというかもしれま
   せんが、私はそれはとてももったいないと思いますし、手話というコミュ
   ニケーションを扱う団体として、外への広がりを持たないことに、何の意
   味があるのだろうか、と思います。

 - 意志がすみやかに決定できる体制がある
     戦後、民主主義というのが広まって、何でもかんでもみんなで決めるこ
   とが正しいような雰囲気がありますが、これにはとてつもなく重いコスト
   がかかります。国政選挙を見ればわかるように、あのあまり民意を反映し
   ていないような議員を選ぶことでさえ、徹夜で開票作業しなければならな
   かったりします。しかも、原則は多数決。少数意見は反映されにくいのも
   特徴です。
     手話サークルというのは、大きくても100名、普通は20名程度の団体で
   す。こういう場合に、いちいち全員と相談して、事を決めるのはあんまり
   にもコストが大きすぎるように思います。お金の問題に関わらない限り、
   役員の裁量権をとても強くしておくのも、小さな団体を続けていくのは、
   一つの手なのではないかと思います。もちろん、役員のバランス感覚がよ
   ければ、それに越したことはありませんが、元々が自主的な活動団体なの
   ですから、多少偏りがあっても、ちと、みんなの心持ちを大きくして、特
   定の人に任せるぐらいの度量は必要に感じます。

 - 意志決定機関を交換できるようにしておく
     これは、上の意見とは全く逆なのですが、これも大切です。事例2のよう
   に、あんまりにも特定の人の意見が通るような状況では、どんどん間違っ
   た方向に進んでしまうからです。
     「岡目八目」という諺があります。囲碁を打っている当事者よりも横で
   見ている人の方が良い手がわかるという意味です。数学にはゲーテル不完
   全性定理というものがあります。2つあって、第一不完全性定理は「いかな
   る論理体系において、その論理体系によって作られる論理式のなかには、
   証明する事も反証することもできないものが存在する。」というもので、
   第二不完全性定理は「いかなる論理体系でも無矛盾であるとき、その無矛
   盾性をその体系の公理系だけでは証明できない」というものです。厳密に
   言わなければ、「わかる人にはわかる。わからない人は逆立ちしたってわ
   からない」ということです。間違ったことを言っている人は、自分が間
   違っていることに気がついていないのかもしれない。それは他の人からの
   つっこみが必要だと思うわけです。

  最後になって、込み入った話になりましたが、こういう話が好きな人は次の
URLがお勧めです。
  http://kamakura.ryoma.co.jp/~aoki/paradigm/paradigm-web.htm
  量子論と複雑系のパラダイム

  とにかく、このサークル運営問題は、人間関係や地域状況が絡んで複雑にな
りがち。どこにでも通用する特効薬はないとは思いますけど、皆さんの体験か
ら何か参考になることがあれば、どうぞ教えてください。

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  全通研の討論集会ともなると、高尚な議論が多くて、このような泥臭い話は
少ないのですが、夜の飲み会には、結構ネタになります。なかなかどこも大変
だなぁ、と思います。そんな話がしたい人は、福島の大会で私に声をかけて下
さい。

  では、また来週。

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