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             _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』   _/_/
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No. 61                                              2001年10月17日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  皆さん、こんにちは。暖かいのか、寒いのかよくわからん天気が続きますが
いかがお過ごしでしょうか。

  なんとか休刊せずに発行できました。といっても、以前に配信したNo.31の
「手話学習に使うテキスト」の焼き直しなのですが、大幅に増補したので、
No.を付け直しました。ということで、久しぶりに手話サークルの話です。

  ところで、Webのバックナンバーですが、目的別索引を作ってみました。そ
んな暇があるなら新しい原稿を作れよ、と言われそうですが、意外と簡単にで
きたものですから... よろしかったら一度ご覧下さい。

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  私は手話の活動の基本は手話サークルにあると思います。と言っても、そん
なにたいした哲学や主義があるわけでもないのですが、手話サークルは手話の
勉強の場であり、ろう運動の拠点であり、社会との接点となり、老若男女が集
まる情報交換の場であって欲しいと思います。

  ただ、すべてを追い求めるのは大変です。そこで少しでも楽になるために、
勉強のテキストは自作できないかと考えました。

  と言いつつ、突然、話が脱線しますが、何の因果か、私は大学学部4年の時
に教育実習を経験しました。教わる方ではなくて、教える方で。(そりゃそう
だ、教育実習ですもの。)しかも教科は数学。高校の時に数Iで年間平均点が32
点(補講での追加点を含めてですから、実質は赤点...)だった私が高校2年生の
代数幾何を教えようというのですから、世の中、何があるかわからないなぁ、
と思いました。もちろん、生徒には私の高校時代の成績は秘密です。

  その教育実習の時に強く感じたことが2点あって、1つ目が「教えることは自
分の勉強になる」と言うこと。これはよく言われることですが、教える立場に
なると、いかに自分がわかっていないかがよくわかります。教育実習中の授業
で、そんな状態では困るのでが、前日に黒板を使いながら次の日の授業の予行
練習をしてみると、説明がくどいとか、言葉に詰まるとか、よくわかっていな
いところに気がつくわけです。また授業中でも、なんのことない質問をされて
立ち往生してしまうと、まだまだ勉強足りんなと思うのです。

  もう1つ強く思ったこと。こちらが今回の本題です。それは、「授業は、事
前の準備で9割決まる」ってことです。生徒にやらせた問題が難しくてなかな
か解いてくれないとか、質問されたりということは、案外どうにでも調整でき
て、授業が上手く進行しない時の原因は、自分の準備不足であったことがほと
んどでした。予行練習で時間がかかるからと省略した部分とか、事前に解いて
いなかった問題とか、プリントを作るのが面倒だから口頭説明で済ませてしま
おうとした部分とか。とにかく、手を抜いた部分が穴となって、授業の流れが
ボロボロになるのがよくあるパターンでした。ですから、配るプリントはしっ
かり作り、説明する台詞を繰り返し練習したものです。

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  そういうことをしてくると、気になってくるのが手話サークルでの学習会で
す。その日集まった人がいつものテキストを適当に開いて、適当に選んだ例文
を聾者に教えてもらう、なんてことでは、全然勉強にならないのは明白です。
マンネリ化もするし、やる気も低下してきます。サークルの雰囲気もどんより
してきてしまいます。

  というわけで、教育実習での経験を手話サークルに行かそうと考え出したわ
けです。ターゲットは、手話サークル例会での普通の手話の学習です。

  最大の問題は時間と人材です。教職はそれを仕事としている人がいるわけで
使える時間も沢山ありますが、手話サークルに参加する人は別に本職があるこ
とがほとんどです。運が良ければ、昼間に時間のある主婦に頼むという手もあ
りますが、頼むにしてもガイドラインが必要です。丸投げしてしまったら、結
局、いつものサークルになってしまうことも考えられます。とにかく、時間が
ない人ばかりで、準備や予行練習にそう時間がかけられないと想定します。
  もう一つ、手話サークルはいつも聾者がいるとは限らず、通訳できる人がい
るとも限らないと想定します。これはかなり厳しい制約で、できることなら聾
者から手話を教えてもらった方がいいですし、初心者には通訳できる人が近く
にいて補足してあげた方がいいに決まっています。でも、なかなかそう恵まれ
た環境のサークルはないのが現状で、私の所属してきたサークルも、聾者が少
ないことが多くて、何を勉強すればいいのやら、ということがありました。

  そういう状態をなんとか改善し、もし、聾者や通訳者がいれば、さらに効率
的に、効果的な勉強ができればいいな、と思いました。どうすれば労力を最小
に、少ない人材で、みんなが「今日は勉強になったなぁ」と思える学習会がで
きるのかを考えました。

  もちろん、手話の教育方法は各地で色々考えられていて、その代表的なもの
が全日ろう連のテキストであり、国リハの講習会であるわけですが、それらは
十分なスタッフが揃えられることが前提となっています。ですから、ナチュラ
ルアプローチといったかなり大胆なこともできますけど、私が目指しているも
のは手の届く範囲でどれだけできるか、ということですから、かなり方向が違
います。できることも限られています。

  とりあえず、今回は、現段階でまあまあうまい具合にいっている方法をご紹
介するので、改良案をどしどしお寄せ下さい。

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  やることは2つです。

  1. テキスト作り
  2. 状況作り

  とにかく複雑なことはできません。単純なことで最大効果を得るのが目標で
す。

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1. テキスト作り

  テキストなら市販の本もあります。あえてそれらを使わず、自作する意味は
以下の点にあります。

  - 安上がり

    わずか1000円ぐらいと思うのですが、本に札を出すのには躊躇する人が多
    いようです。自分で作ればあとはコピー代だけ。わずか数十円です。

  - コピーも自由

    既製品には著作権がありますから、勝手にコピーしたり、編集したりなん
    てできません。自分で作って、著作権を放棄してしまえば、煮て食おうが
    焼いて食おうが勝手です。当然、今回紹介するテキストは私の自作で著作
    権は放棄しております。自由に使って下さい。

  - 解説はいらない

    手話サークルで使うのですから、「聾者とは?」「手話の違い」なんて説
    明はいりません。それなりの人を連れてきて説明してもらえばいいわけで
    すから。

  - 会話文は欲しくない

    これは個人的な趣味かもしれませんが、会話文は状況が固定してしまうの
    であまり好きではありません。その場その時に応じて話が広がっていくよ
    うなキーワードのようなものが欲しいのです。

  - 絵もいらない

    単語の表現は、地域差、個人差、年代差があり、微妙に、時には全然違っ
    たりします。ですから、絵や写真の付いたものをテキストに勉強すると混
    乱が起きたりします。「どっちが正しい手話なの?」なんて疑問が代表的
    です。でも、正しい手話とか間違った手話なんて考え方がナンセンスで、
    日常的に使っている手話は、全部正しいわけです。だから、テキストを元
    に、そこにいる聾者から教えてもらう手話を尊重したいので、絵や写真は
    いらない、というわけです。でも、本当の理由は絵や写真を作るのが面倒
    ということだったりもしますけど。

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2. 状況作り

  説明すればなんて事無いことばかりなんですが、これは座る位置や司会者の
進行方法のことです。こういうことには天才的な人がいますが、私は元々苦手
としていたところなので、色々考えました。
  要はそこにどんな人がいて、全員が学習した気分になるためにはどのように
進行させればいいかということです。

  - 少人数化する

    聾者1人、手話通訳1人、その他2〜5人を基本にして、小グループに分割し
    てしまいます。これは手を動かす機会を増やし、学習に集中しやすくする
    ことになります。

  - ある程度手話ができる人を徹底活用する

    ある程度手話ができる人、とは、だいたい手話を勉強し始めて1〜2年ぐら
    いの人。覚えている単語も少ないし、技術もまだまだであるのは確かです
    が、だからといって、何もしないとそのままサークルからいなくなって終
    わりです。それなら使えるだけ使おう、使える者は親でも使え寝ている者
    は起こして使えと言うではないか、縁があればうまくなって残ってくれる
    さ、というわけです。
      そこで、通訳の練習でもある、と言いくるめて、読み取りや初心者の代
    弁をさせます。ですから、座る位置は聾者の向かいか初心者の横。つまり
    初心者が通訳者とではなく聾者と話すような位置関係にしておきます。話
    すのは通訳者とではなく聾者とです。そして、初心者は通訳者の踏み台に
    してでも手話を学んでいって欲しいものです。

  - 無駄話をさせない

    人間はほっておくと、おしゃべりをはじめてしまうものです。私がいる手
    話サークルは主婦が多いせいでしょうか? 当然、勉強の邪魔になります。
    本人は悪気がないこともありますし、ガンガン注意すると、こうるさい奴
    だなあと思われて、その後やりにくくなるので、それなら自然と状況をお
    しゃべりできない方向にしてしまった方が楽ちんです。
    例えば上記の聾者1、通訳1、その他5人の場合、輪状に座れば、聾者と通
    訳の挟まれるのは2人と3人になるので、3人の方に気を使っていれば、全
    体の集中力が欠けることはほとんどなくなります。
    質問はどんどん引き出しますが、無駄話はこれでカットするわけです。

  - 遠慮させない

    これもある状況への追い込みです。初心者に手を動かさせるような状況に
    追い込みます。そのためには、まず適度にできそうな人にさせて、次に初
    心者を指名します。

  - 聾者に的確に助言してもらう状況を作る

    自戒を込めて言いますけど、テキストを使う学習では、どの表現をしてい
    るのかだんだんわからなくなってしまうんですよね。そうなると聾者から
    のアドバイスがとんちんかんなものになったりします。それを避けるため
    には、今どの文を表現しているのかを常に明確にします。そのために、テ
    キストの文には全て番号が付いています。
    それから、どうせ勉強するなら、楽しくやりたいし、あまり聾者に負担に
    なるのも避けたい。だから、表現してから、常に答えを言ってもらうので
    はなく、確認役になってもらうぐらいでちょうどいいかもしれません。で
    も、思いつくことがあれば全部話してもらいます。

  - テキストの進度は気にしない

    どちらかといえば、一つの文や単語をネタに派生語の勉強をした方が楽し
    いです。また、質問が乗じてテキストの後の方のネタが出てきてしまった
    としたら、変えるべきはテキストであって(テキストが自然な流れになっ
    ていないからそうなる)、勉強はそのまま続けた方が楽しいです。

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  では、テキストのご紹介です。
  まずは、お決まりの文章から。このまま覚えていいぐらい、定型の文章ばか
りです。

A. 挨拶など

 1). こんにちは / こんばんわ / おはようございます
 2). ありがとう
 3). すみません
 4). 失礼します
 5). お久しぶり。元気?
 6). はじめまして
 7). さようなら。また会いましょう。
 8). お誕生日、おめでとう!
 9). 明けましておめでとうございます
10). いろいろお世話になりました
11). いらっしゃいませ

  意外と「いらっしゃいませ」なんかは手強かったりします。さりげなく表現
できる「いらっしゃいませ」の表現を考えてみたいものです。そもそも、なぜ
「いらっしゃいませ」の表現が確立していないのかを考えるだけで、かなり盛
り上がるものです。それに、最近は客商売の人が手話を習いたいという場合が
多くて、いらっしゃいませ、ありがとうございました、というような表現はど
うしても知りたいものなんですよね。みんなで考えてみましょう。

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  テキストは、まだまだ続くのですが、来週のネタがなくなってしまうので、
今回は、ここまで。ごめんなさいね。

  余談ですが、このテキストは、番号付けにも工夫しているんです。章立てと
文の番号は英語と数字で分けました。こうすれば、「Aの9」で1つの文を特定
できるからです。なかなか便利でしょ?

  なお、この程度の文は、よくありがちで、誰もが思いつくようなものばかり
ですので、著作人格権が発生するとも思えないのですが、一応、全て私の創作
ですので、コピー、改変、ご自由にお使い下さい。でも、改良点があれば教え
て下さいね。

  では、また来週。

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