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    メールマガジン 「語ろうか、手話について」

No. 53 Rev.1                                        2001年10月10日発行
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  だんだんと風が冷たくなってきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
もう、今年から10月10日が体育の日とは限らないんですね。健康不足の私には
どうでもいいことなんですけどね。

  今回は「ER 救急救命室」の原稿を再配信します。いよいよ第5シーズンが今
週で最終回を迎えることと、以前の原稿は誤字脱字だらけでとても気になって
いたものですから。No.53とだいぶ最近の話ですが、訂正を兼ねて、再配信し
ます。

  それと、やっぱり、年末にかけて、いよいよ忙しくなってきてまして、ろく
な原稿が書けそうにないので、再配信、埋め草で年内は乗りきろうと思ってい
ます。自然言語処理やら、サークルの問題点やら、手話コーラスの話を心待ち
にしている方には申し訳ありません。気長におつきあい下されば感謝感激雨あ
られです。そういえば、前の「徒然埋め草」、それほど悪い評判はなかったよ
うで、今後、ますます埋め草が増えそうな感じです。あれは、ほとんど資料を
読まずに書いているので「変だな?」と思ったら、他の文献を参照するように
してくださいね。もちろん、訂正、文句、意見、いつでも大歓迎です。ただ、
すみませんけど、返信は期待しないでくださいね。

  では、再配信の原稿をどうぞ。

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  私が注目しているのは「ER 救急救命室」です。これはNHKの地上波では金曜
の23:00から放送しているドラマで、アメリカの緊急医療の現場を描いたもの
です。
  アメリカは国民皆保険制度ではありません。金持ちは保険に入り、たいてい
の手術してもらえますし、高い薬ももらえますが、その以外の人は加入してい
る保険次第で、効き目があるけど保険適用外の薬はもらえなかったりします。
貧乏な人は、薬さえ処方してくれません。
  アメリカは確かに高度な医療を持っていますが、それが一般の庶民にまで還
元されるかというと、そうではありません。現実のアメリカは貧富の差が激し
く、致命的な怪我をしたプロ野球選手を復帰させる外科医がいる一方で、単な
る風邪で命を簡単に落としてしまうのが現実だったりします。そういう面では
日本は薬漬けとか3分治療なんて言われていますが、全体の評価は結構いいん
ですよね。

  話がそれましたが、アメリカでも貧乏な人が医療を受けられる場所がありま
す。それがER、救急救命室です。公立病院にある救急救命室、ERは救急車で運
ばれてくる急患を扱うところで、とにかく蘇生を第一に行いますので、保険で
ない費用で治療してもらえます。その代わり、ある程度直ったら、放り出され
ます。放り出される時、どんな保険に入っているかで、その人の運命が変わっ
ていく様子もドラマでは描かれます。そのような多少いびつな制度の狭間と人
間模様を丁寧に描いたドラマ「ER」は現在でもアメリカでダントツの視聴率を
誇り、すでに100話を越えましたが、全然だれることもなく、物語は進んでい
きます。とにかく、いつもがハプニング。患者の人生や、医者のとまどいや成
長などなど、人生の縮図がここに詰まっています。どこから切り取っても引き
込まれるような魅力的な話が、常に何本か並行して走っている。ふと気を緩め
るとおいて行かれそうになるぐらい忙しいドラマですが、それが100話以上も
続いて、さらに魅力が増しているのですから、化け物のようなドラマです。ち
なみに、俳優のギャラも高額で、主役のカーター先生は若くしてうん十億円も
らっているとか。

  さて、今回の「語ろうか」はERに注目します。ドラマの中のセリフを著作権
違反にならないように引用しますので、一部わかりにくいところがあるかもし
れません。本稿の目的は「ERを通じてアメリカの聾思想を考える」ことにあり
ますので、見苦しいところはご了承下さい。
  なお、最初に断っておきますが、なんと、これだけ偉そうなことを書いてお
いて、私は文字放送デコーダーを持っていないのです。だから、ERは文字放送
されているはずなのですが、聴覚障害者の皆さんがどこまでこのドラマを見て
面白いと思うかわかりません。でも、今回のような話もあるので、是非、見て
欲しいと思います。

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  数年前から、日本でもDproという集団が、このアメリカ流の「聴覚障害は個
性だ主義」を強く主張しています。「ろう文化」というものがあるというのが
彼らの主張です。私は感心する一方で、どうもうさんくさく感じるところもあ
るのが正直なところです。
  その具体的な中身なのですが、これが結構説明が面倒です。そんな時、ERを
見ていたら、ちょうどうまいぐあいにドラマの中でDproの主張をわかりやすく
理解できるエピソードがあったので、今回ご紹介する次第です。

  現在、NHKの地上波ではER V(5)が放送されています。今回紹介するエピソー
ドは、このドラマの準主役である黒人医師ベントン先生の息子、リース君が聴
覚障害者である話で、現在進行中です。

  ベントン先生は健聴者。気むずかしい外科医ですが、初めての子供に大喜び
です。でも、息子の聴力に異常があると言われて戸惑います。それで、ベント
ン先生は、専門医と相談します。以下のセリフはその様子です。

(以下、ベントン先生を「B」、相手の専門医を「A」と示します。)
(それから聞き取れなかった部分はxxxとしています。)
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  B: 人工内耳の移植で重度の難聴患者が聞こえるようになったそうですね。
  A: しかし、この手術は残存聴力を完全に奪い去ってしまう。
  B: でも手術して聞こえるようになるなら、それでいいじゃないですか。
  A: この場合はxxxの基準に当てはまらないんだ。もっとリスクの低い治療器
     具がある。補聴器だ。
  B: 新しいデジタル式の?
  A: 同時に言語療法を施す。
  B: あれはどうです、あの、手話は?
  A: 聴力と言語訓練の方が先だと思うよ。
  B: そうですか、手に入れる手続きは? デジタル補聴器を。
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  私が感心したのは、症状に対する適切な治療というものが、規定されている
点です。なんでも人工内耳にすればいいわけではなく、補聴器があることを示
されます。最初のとっかかりとしては、こんなものかなと思います。

  ベントン先生は聴覚障害に全く無知です。手話も、人工内耳も全くわかりま
せん。しかし、自分の持つ医学の知識で判断していこうとします。その後、聴
覚指導を受ける子供の様子が描かれます。おもちゃをつまらなそうに見ている
息子に対して、無理してでも興味を持たせようとするセラピーの先生。さらに
は、「親の協力も必要だ」と言われます。子供扱いの下手なベントン先生は、
ちょっと努力しますが、とてもそんな指導法を続ける自信がなくなっていきま
す。

  ドラマでは両方あわせてもわずかに10分ぐらいのシーンですが、これだけで
親の揺れ動く気持ちが十分に伝わってきます。日本でも、子供の耳が聞こえな
いとわかった時、色々な検査をしたり、指導を受けさせたりするものだそうで
す。子供のために何がベストか? 自分にできることは何か? 聴覚障害児に対す
る言葉の指導はかなり厳しいものがあります。これは親のエゴか? 子供のため
なのか? 揺れ動く気持ちが、ベントン先生の演技を通して痛いほど伝わってき
ます。

  耳が聞こえないだけで、言葉の習得はかなり大変です。ベントン先生は言語
指導を見ていて、なんとか医学的に治せないかと考えます。子供扱いの下手な
自分には、とても協力なんてできそうにないし、それに子供がつらそうに見え
たためです。そして、同僚のケリー・ウィーバーと話をして、聴覚障害医療で
最先端を走っているという先生を紹介してもらいます。

(以下、Bはベントン先生、部屋の中には白衣を着た女性が2人います。JとPと
します。)

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  J: 何かご用?
  B: えっと、カウンティ総合のピーター・ベントンです。ケリー・ウィー
     バーの紹介で。
  J: あぁ、ジャクソンです。Dr.パークスはただいま診察中ですが、どうぞお
     入り下さい。

  (ここで、部屋の中の女性が出てきて笑顔で握手します。)

  B: どうも、Dr.ベントンです。どうぞ、診察を続けてください。
  J: いいえ、ご心配なく。よく来てくださったわ。

  ジャクソン(J)さんが突然、手話で握手をした女性(P)に話し始めます。
  ベントン先生、しばし考え込みます。

  B: ...すみません。思い違いがあったようで。
  P: (ここからジャクソンさんの通訳となります)
     いいえ、話はケリーから聞きました。人工内耳をはじめとする先端医療
     の選択肢についてご相談したいと思います。
     あぁ、私がろうあ者だとご存じなかったのね?
  B: はい、その通りで。
  J: 自分と話す時は正面を向いて欲しいと言っています。唇の動きを読みと
     りますので。
  B: あぁ、えっと、聾者とは知りませんでした。
  P: いいんですよ、是非お話を。コーヒーでも飲みながら。
  B: はい、お願いします。
  P: わかりました。では診察が終わったら、みんなで飲みに行きましょう。
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  聴覚障害を持つ医者がいるというのが驚きですね。日本ではほとんど考えら
れない話ですが、アメリカでは何人かいるそうです。医者の数は、私も把握し
ていませんので、沢山いるのかどうかはわかりません。ERでも聴覚障害を持つ
医者は初めての登場なので、それほど沢山いるわけでもなさそうです。

  さて、場面変わって、コーヒーを3人で飲みながら語っています。もう通訳
のジャクソンさんは、自分の意志を出すことはなく、完全に通訳に徹していま
す。まるで、そこには通訳者なんて人がいないぐらいです。

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  P: 息子さんにとって何がベストか、選択に迷っていらっしゃるでしょ?
  B: 私は息子が困らずに生きていけたら、それでいいんです。
  P: 人工内耳がなくても私は困らずに生きてますよ。
  B: それで聞こえるようになればいいことでしょ?
  P: 他にも方法はありますよ。
  B: えぇ、でも、人に頼る暮らしをさせたくないんです。
  P: あなたの周辺に難聴の人はいます?
  B: いえ、いません。
  P: 難聴は人が思うほど大変なことでは、ないんですよ。
  B: 不自由は無いって事ですか?
  P: これは本人でなければわかりません。私に黒人の皆さんの気持ちがわか
     らないように。
  B: 肌の色は重荷じゃありませんよ。私は私だ。
  P: 私も「ろう」であることは重荷ではありません。私は私です。息子さん
     の難聴から目をそむけたら、彼のアイデンティティーを踏みにじること
     になります。
  B: 逃げるつもりはありませんよ。医学的な欠陥を治してやりたいだけだ。
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  このパークス先生の意見が、Dproの「ろう文化」と言っているものの典型で
しょう。聴覚障害は「不便だが不幸ではない」と言う考え方、障害も個性だと
いう考え方です。それがいいのか悪いのか、私にもまだよくわからないのです
が、少なくともベントン先生は、少々失望したようです。「耳が聞こえないこ
とがアイデンティティー? 何を言っていることやら」という目をします。一方
パークス先生は、にこやかにベントン先生を見つめます。それが自分の生き方
の自信のほどを表しているかのようです。

  ベントン先生は自分の病院に戻ってきます。そこに、同僚のウィーバー先生
がやってきます。

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  B: Dr. パークスに会いに行っていたんだ。
  W: 会えて良かった?
  B: いや、どうかな。わからん。他の難聴の子供達と一緒に、息子に手話を
     習わせろと言っていたよ。
  W: そう、彼女は信念に支えられた強い女性なのよ。
  B: 信念.. そうか。難聴を直そうという気などないな。
  W: でも、立派な女性だと思ったでしょ。
  B: 俺は自分の息子の欠陥を治せるものなら治してやりたい。
  W: 欠陥? それはどういう意味?
  B: ...リースは俺の息子だ。口出ししないでくれ。
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  ウィーバー先生は、ERでちょっと困った先生として描かれていて、考え方は
先進的、正論なんだけど、杓子定規で、どうもみんなと馬が合いません。悪い
意味でのフェミニストの固まりのような人で、そんな人が支持しているとなる
と、パークス先生もどんなものか、という気がしてきます。ウィーバー先生の
言動が、ろうへの理解なのか、それとも友人を信頼しているだけでの思いなの
かがよくわからないまま、この場面は終わります。ただ、ベントン先生も欠陥
という言い方には少し自分でも引っかかるものが出てきたと言うところです。

  次に、ベントン先生は、人工内耳の専門家に相談します。

(以下、人工内耳の専門医のセリフはCです。)
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  C: 人工内耳移植は奇跡じゃない。テクノロジーは常に進歩しているよ。
  B: 文献を読んで感動しました。
  C: いや読むんじゃなくて、そういう子供を持つ親の体験談を聞くといい。
     君と同じ境遇を持つ親たちがいるのでいつでも紹介するよ。
  B: そうですか。反対意見も耳にたこができるほど聞かされまして。
  C: 信者が居るんだよ。
  B: ...まぁ、主義主張がありますからね。
  C: 彼らは熱弁をふるって攻撃的だよ。なんていうか、まさに過激派だね。
     僕が聾文化を破壊している虐殺者だと非難した人もいる。聾はライフス
     タイルの一つじゃ無いと思うんだ。そうだと主張する人には理屈は通じ
     ないよ。
  B: えぇ、聞こえて話せるようになるのに、どうして反対するのか、それが
     理解できなくて。
  C: 問題はその人が怠け者であるかどうかということだ。聾者でも社会で十
     分に仕事ができる人がいるのに、一部の連中はそのための努力を惜しん
     で屁理屈を振り回す。
  B: いやぁ、それはちょっと言い過ぎじゃないですか。
  C: そして僕たちを攻撃するのに攻撃するのに異常な情熱を燃やすんだ。
     だから、そんな連中の言い分には耳を貸さずに仕事をするだけだよ。
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  このような議論が数年前、日本でもありました。まさに先生の言う過激派が
Dproです。この先生はかなり聾者のある特定の人々を偏見の目で見ていますが
正論も吐いています。つまり、病気なら治して働け、ということ。それが税金
を納め、国を成り立たせる基本だということです。それから、この先生のよう
に理不尽なまでに攻撃されている人が日本にいることも事実です。

  聾文化ってものは、私にもまだよくわからなくて、これについてはまた後日
語りたいと思いますが、聞こえないことで違いがあるのは確かとしても、それ
が人格にまで関わってくることなんだろうかと思うことはあります。そして聾
文化の破壊者とか、虐殺者という言い方は、あんまりなんじゃないかな、とい
う気もします。

  でも、人工内耳に問題があることも確かで、子供が小さい時に付けなければ
効果が落ちます。外すことはできないし、残存聴力もなくなります。今では無
線方式といったものもありますが、携帯電話の電波などで雑音が出てしまった
ら、逃れることができないという問題もあります。実際に、そうい症状は、私
は聞いたことはありませんが、最近の携帯電話の普及を見ていると、とても心
配になります。ペースメーカよりも深刻だと思います。

  さて、話をERに戻しますが、手話の生活を選んでも、パーカー先生のように
聾であっても医者として立派に仕事をしている人もアメリカにはいます。この
人工内耳の専門医はちょっと言い過ぎという気はします。でも、日本でも障害
者ということで年金暮らしを選んでいる人はいます。昔、冗談で「耳が聞こえ
るようになったら年金がもらえないので困る」というのを聞いたことがあるの
ですが、私にはとても冗談では済ませられない問題だと思いました。国の借金
はウン十兆円。働くことは自由ではなく、義務なんですけどね。

  また話がそれましたが、再びERに話を戻します。
  このあと、ベントン先生は人工内耳の手術を見学することにします。そして
手術前に人工内耳をつける子供の親に会い、人工内耳を子供につけることにた
めらいはないのか? と聞きます。両親は「聞こえることが子供のためだ」と信
じており、「ためらいはない」と言います。ベントン先生は、その言葉を受け
入れつつも、いざ人工内耳の手術を見学しているうちに気持ちが変わってきま
す。綺麗に剃った耳の周りにメスを入れていく手術の光景にベントン先生は何
を思ったのか... その後、ベントン先生は自分の息子の手術を延期するように
頼みます。健康な子供の皮膚にメスを入れることに疑問を持ったのか、それと
も、もっと良い方法があると漠然と思ったのか、それが何かはわかりません。

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  そうこうしているうちに、息子のリースが保育所で問題を起こします。他の
子供を殴るそうです。これが何の伏線なのかは私にはわかりませんが、保育所
の先生から「息子さんには特別な環境が必要です」と言われて、どうしようか
と頭を抱えます。

  そんなことをしているうちに、パークス先生の孫が虫垂炎でやってきます。
孫は健聴者です。パークス先生が手話で話し、それを患者の孫が通訳する。ベ
ントン先生は、なんかもどかしい感じがします。そのうち、母親もやってきま
す。母親も聾です。通訳が欲しいと言われるが、忙しくて手配できません。そ
のうち手術がはじまり、パークス先生の孫の虫垂炎は無事に治ります。ほっと
胸をなで下ろす母親とパークス先生。

  パークス先生と母親と孫。3人は、ある時はなごやかに、ある時は真剣に、
表情豊かに手話で話す様子を見ていて、ベントン先生はある種の考えが浮かん
で来たようです。

  保育室に来るベントン先生
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  B: おーい、おい、どうした? (息子に話しかける) 元気にしてたか?
     な、俺は誰だ? 俺は誰だ? 知ってる? お父さんだよ
  (ベントン先生はアメリカ手話で「お父さん」を表します。)
  B: 俺のマネして言ってみろ。これがパパ。これがパパだよ。
     いや、... やめとこう。
  (諦めて天井を見るベントン先生。ふと子供を見ると、子供が手話で「お父
   さん」を表現している。)
  B: お、おい。いい子だなぁ。ははは、はは。ははははは。
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  無邪気に喜ぶベントン先生。確信が芽生えたのでしょうか。

  その後、ベントン先生はろう者の個人教授で手話を習い始めます。片言です
が、息子のリース君に話しかけるのも、ほとんどは手話と口話を同時に使いま
す。また、リース君のために保育園を探したりしています。病院にも保育所は
ありますが、他の子と遊ばずに、一人、ボーとしているリース君を見ていると
ベントン先生は、またしても悩んでいるようです。

  最近、リース君を送ってきてくれた人に、こんなことを言うシーンがありま
した。
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  D: 今日は3時に迎えに来ればいいのか?
  B: いや、その後、スピーチセラピーを受けさせるから、今日は俺が連れて
     帰る。
  D: なんだ、すっかり手話派になったと思っていたよ。
  B: 何がいいかは、まだわからん。とりあえず、色々試しているんだ。
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  そんなベントン先生は、アメリカの来シーズンを最後に、このドラマから降
りるそうです。どんな形でリースのエピソードが決着するのか、今から楽しみ
でもあります。

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  個人的に、アメリカの考え方が全て正しいとは思えないんですよ。一応、今
までのERでは手話が優位に終わっていますが、日本の場合、社会で手話が通じ
ることは少ないし、手話通訳者だって満足にはいないわけです。パークス先生
のような高い地位の聾者は少ないし、通訳者を専属で雇えるだけの収入のある
人も少ないし、それだけの通訳者の人材も少ない。そんな状況で、思想だけア
メリカから輸入して、うまくいくはずがないと思うのです。

  その一方で、このERのような社会が日本でも実現したらいいなぁ、と思いま
す。それはアメリカを賛美するのではなく、参考にして、地道に運動を進めて
いくしかないと思うのです。それに法体系も、国民気質もアメリカと日本は違
うわけです。星の金貨のようなドラマが受け入れられている日本では、ERのレ
ベルを目指すためには、よほど大変な努力が必要なんだろうなと思います。

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  では、また来週。

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