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             _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』   _/_/
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No. 49                                              2001年 6月 6日発行
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  皆さん、こんにちは。
  いよいよ、梅雨ですね。食中毒には気をつけましょう。

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  今回は、反響の大きい手話技能検定の話です。目の敵にしているわけではあ
りませんけど、考えさせられる情報が寄せられたので、再び俎上に乗せた次第
です。タイトルも「手話技能検定の話#」。次は「もっと」ですかね。

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  「共時性」という言葉をご存じでしょうか。まだはっきり定義された用語で
はないようですが、虫の知らせのような、空間上は離れているのに、同じ時間
に相互に関係するような現象が起きることを言います。例えば、靴のひもが切
れた時に、家族が病気で倒れたというのは、共時性の現象という具合に言うよ
うです。もっと広義に、ローマ法王が倒れたときに、どこぞで戦争が勃発した
とか、そんなのも共時性というようです。確か、私は心理学の用語としてみた
ことがあるのですが、出典がわかりませんでした。(手元の辞書では、共時性
言語学という言葉ぐらいしか載っていなかったのですが、こちらは私には全然
わかりませんので、あしからず。)かなり、オカルト、つまり科学的ではない
話なので、真偽のほどは立証できないとは思いますけど。

  なんで、こんな話をしたのかというと、最近「これは共時性かな?」と思う
ことがあったからです。ちょっと前の話ですが、全通研副運営委員長の石川芳
郎さんの講演を聞く機会がありまして、その中で手話技能検定の話が出てきま
した。で、偶然にもその数日前に、ある「語ろうか」読者から手話技能検定の
情報をもらったんですね。内容がかなり似通っていたので、なんか不思議な気
持ちがしたものです。

  同じような言葉に「マーフィーの法則」というものもありますね。一番起こ
りそうもないことが起こる、という経験則を集めたものです。例えば、「傘を
買った途端に雨がやむ。」とか「急いでいるときに限って、スピード違反の取
り締まりをやっている。」とか「高いカーペットほど、ジャムの付いたパンを
落とす確率が高い。」というものです。ひと昔前に爆発的に流行って、色々な
変形版が出たのですが、さしずめ今回の件で言えば「珍しい情報は一度にやっ
てくる」といったところでしょうか。

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  かなり長い前置きでしたが、その両者が指摘してきた内容というのが、手話
技能検定協会の役員が関わっている手話の通信教育の広告です。女性週刊誌や
テレビ雑誌にある怪しげな通信教育に手話があるっていうんです。
  そういえば、と思い、今年のNHKの手話テキストを見てみると、後ろの方の
広告がえらいことになっているのに気がつきました。それを見ていて、とても
複雑な気持ちになりました。最終的には神田先生、谷さんのコメントももらっ
たのであわせて載せておきます。

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  通信教育といえば、なんといっても、英語がよく目につきます。全国版の新
聞を見ていれば、スピードラーニングという教材をよく見かけます。関英雄と
いう人が推薦している物です。この関英雄という人物は、「とんでも科学」の
分野でとても有名な人です。「とんでも科学」というのは、相対性理論は嘘
だったとか、1999年に人類は滅びるとか、アメリカには宇宙人が生け捕りにさ
れているというような突飛なことを、いかにも科学的なように扱うことを言い
ます。本人達がとても真面目なのがなんとも哀れなのですが、彼らに共通して
いるのは、自分の直感のみを信じ、科学的な検証の道具を全然使わない、もし
くは間違って使ってしまうことです。もっとも、どんな人でも道を踏み外すこ
とはあるので、自戒を含めて、あんまり人のことは笑えなかったりしますが。
さて、関英雄という人は、東工大で博士の学位まで取ったにもかかわらず、な
ぜかおかしな理論ばかり唱えている人で、特にスピードラーニングという記憶
方がお気に入りのようです。その方法を使えば、ものすごい早さで沢山のこと
が記憶できるそうですが、その解説書を読んでも、「沢山の人が実践して効果
を上げた」とか「○○国で認定された」といったような、賞賛話ばかりで、具
体的にどうやっているのかがさっぱりわかりません。でも、ずーと新聞に広告
を載せ続けているところからすると、常に教材は売れ続けているようで、関英
雄さんもお元気なようです。

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  さて、話をNHKの手話テキストに戻します。

  NHKのテキストに載っている広告はNHK関係がほとんどで、それ以外の場合は
かなり広告審査ように思うのですが、手話に限っては全日本ろうあ連盟の書籍
宣伝が載っていることもあり、1996年の下半期のテキストの載った、日本カル
チャー協会というところの広告「手話講座」が始まりのようです。「NHKテキ
ストでもこんな広告を載せるんだぁ」と違和感を持ったのを覚えています。

  私は「手話はふれあいの言葉だから、ろう者に教えてもらわないと駄目だ」
とは言いませんが、本とビデオだけではきちんとした手話は身につかないだろ
うなぁ、と思います。
  4、5年ぐらい前から、手話サークルに初めて来る人でも結構表現できること
があって「どこで勉強したのですか?」と聞くと、「本で」とか「NHKのテレビ
で」と言うことが多いです。そういう人は、指文字を表現する方向がいまいち
だったりします。(「か」がひっくりかえっているとか。)やっぱり、語学は独
学では限界があると思います。上達するためには、間違いを修正するフィード
バックが不可欠です。

  いつもはNHKのテキストを惰性で買って(番組は見ていませんので...)積んで
おくだけなのですが、「語ろうか」の読者からの指摘で久しぶりによく読んで
みたら、いやー、すごいことになっていますね。特に前述の「日本カルチャー
協会」と「資格試験指導センター」。手話が注目されているのは事実かもしれ
ませんけど、転職に有利って本当? 特に後者は神田先生と谷先生が写真付きで
出てて、L&Mとかいう手法を宣伝しているし、ぱっと見ではスピードラーニン
グの関先生と五十歩百歩です。内容は知りませんけど、今まであちこちで行わ
れている手話講座や既存のビデオ、書籍と比べて違いがあるとは想像できませ
ん。

  そして、かの読者は広告主について興味深いことを指摘されていました。そ
こで、少し調べてみると、確かに興味深いことが発見できました。

  この手話通訳士試験向けの教材を販売している「資格試験指導センター」な
のですが、東京都新宿区百人町1-16-21にあるそうです。なんとホームページ
もあります。(http://www.shikakus.co.jp/)
  最近のインターネットは大変便利なもので、この新宿区百人町1-16-21には
通信販売会社があるとの情報がありました。この会社が売っているのは「奇跡
を呼ぶ天然守護石ファイヤー・ストーン」などという怪しげな物。この手の広
告には詳しくないので、コンビニまで調べに行きました。この手の広告はパチ
ンコ雑誌にあるんですね。初めて知りました。で、雑誌をパラパラ見ていたら
載っていました。「私もこれで大金をGet!」なんて広告です。

  さて、再びインターネットに戻りまして、この住所には次のような会社が存
在しているのだそうです。
  株式会社井成
  株式会社日本グランドアカデミー
  株式会社資格試験指導センター
  全国通信教育振興会(全信興)
  株式会社ラバート
実体はアパートの一室なんだそうですけど、表札にはこれらの会社名があるそ
うです。この一番最初の会社「株式会社 井成」に見覚えはありませんか。最
近、話題になっている次のページをよく見ている方ならピンとくるでしょう。
  http://www.shuwaken.org/shuwaken.htm#yakuin

まだ、わからない方は、1999年長者番付の85番目に注目。
http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/99choja/top51.html

  どうやら手話技能検定協会の設立資金や最初の運転資金は「奇跡を呼ぶ天然
守護石ファイヤー・ストーン」を売った会社から出てきているようです。そし
て、その「関連」会社は手話通訳士試験対策の教材を売っています。手話通訳
士と手話技能検定。ぴったり一致しているわけではありませんが、役員がかな
り重複しています。これは俗に言う、マッチポンプってものではないのか...

  はいはい、確かに、今回の話は私が足で確認した話ではありません。人のう
わさ話を総合すると、こういうことがありえそうだな、程度の話です。

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  噂話だけではしょうがないので、手話技能検定協会の掲示板で直接聞いてみ
ました。それに対する谷さんのコメントは次の通り。

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    みんなの手話にのテキストに載っている資格試験指導センターは通信教
  育で手話の指導を行っています。私はそこでの教材ビデオを企画して出演
  しています。神田先生はその教材のテキストを執筆しています。
    どの程度の関与かというご質問ですが教材の中身は私と神田先生が分担
  してすべて作成しています。
    次に資格試験指導センターと検定協会のかかわりについてですが、当協
  会の理事の長井氏は資格試験指導センターの取締役です。また通信教育を
  受講している方々に検定試験の要綱などをお送りしていますのでこの通信
  講座を受講している人で検定試験を受験される人は大変多いです。そうい
  う意味では関係は深いと思います。上記のことは別にオフレコではありま
  せんからどこに書いていただいても全く問題はありません。   
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それから、教材の宣伝文句についての谷さんと神田先生のコメントは次の通
りです。

  谷さんからのコメント
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    資格試験センターの教材に関わっている以上そこの宣伝に不適切な表現
  があることに対して私もセンターに意見を述べたいと思います。
    もちろん手話検定協会の主張と資格試験センターが同じ主張であるとい
  う訳ではありません。
    ルックアンドメモリー学習法については、私も初めて聞くことばなので
  すが、想像するに「繰り返し何回でもビデオを見てもらいそして記憶して
  もらう」というビデオ学習の利点を強調した表現をしていると思われます。
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  神田先生のコメント
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    資格試験指導センターと当協会は別組織であり、思想まで共有はしてい
  ません。しかし当協会の設立や運営に多大な貢献をしていただいています。
  私は現在のセンターの広告内容がよいとは思いません。しかし、私たちの
  活動が発展し、センターや他の通信教育機関、出版社が手話技能検定試験
  に興味を示せば、次第に誇大広告は減り、手話学習者を惑わすことはなく
  なると期待しています。(中略)
    私は手話を学びたい人は誰でも手話を学んでよいと考えています。自分
  のコミュニケーションのためでも、福祉の道具でも、趣味でも、仕事でも
  目的は自分のものであり、学習目的を教える側が制限すべきではないと考
  えます。手話技能検定は手話が言語であることを客観的に検証するもので
  あり、手話学習者、手話教育者に貢献するものと思います。手話学習者を
  制限しないことにより、層が厚くなり、通訳を目指す人も相対的に増え、
  手話通訳士試験受験者も増えるものと思います。ろう福祉を目指す人は手
  話技能だけでなく当然ろう社会理解も必要です。手話通訳を目指す人は通
  訳技能、ろう福祉の知識も必要です。ろう教育を目指す人はぜひ手話技能
  をもち、その上でしていただきたい。聴覚障害者に関わるあらゆる人々に
  手話を学習していただきたいと考えています。言語は社会、文化と不可分
  の一体であり、言語習得が自然に社会、文化理解とつながると思っていま
  す。 
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  まず、インターネットというメディアの特性でもあるのでしょうけど、素
早く返事がもらえるのがありがたいですね。このあたり、全日ろう連も見習っ
て欲しいです。

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  私は手話で金儲けをするのは悪いことではないと思います。ここは資本主義
社会の日本なんです。何かをすれば、お金がついてまわります。お金が循環し
て、景気が良くなれば、それでみんなはハッピーですよ。その手段が犯罪でな
ければいいじゃないですか。

  手話技能検定協会のやり方が色々批判されていますが、試験というのは日本
の資格好きという性格からして、すごく便利な道具なんです。労働厚生省も統
一カリキュラムの後、手話通訳者という資格試験を実施する意向のようですし
結局、全日ろう連や全通研も同じようなことをするわけです。私は全通研にい
る者として思うのですが、すでに手話技能検定協会を批判する段階ではないよ
うに感じています。

  私は3つの問題を提起します。

  1つは、この通信教材の「高収入が期待できる」とか「安定した職業」とい
う宣伝文句がまかり通る世の中が問題です。今の手話通訳者を見ていれば、高
収入でもなく、不安定な仕事ばかりであることは明らかです。昨年の秋ぐらい
に、ある人がこんなことを言ってました。

  こんな女性ばかり、主婦ばかり、臨時職員ばかりの仕事が正常であるはず
  がない

全く、その通りだと思います。女性差別しているわけではありませんが、今の
社会的な構造からして、女性ばかりの職場が低い地位にあることは明らかで、
手話通訳とはそういう環境で現場の熱意だけで生きながらえている仕事です。
こんな宣伝文句で騙される人がかわいそうです。一般社会にこの程度の認識し
かない手話通訳という仕事が哀れです。我々は、もっと訴えていく必要がある
のではないですか。手話通訳は過酷な労働で、我々はそれを改善するために、
日夜努力していることを。

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  2つ目は、講習会をやる方も受ける方も問題意識が希薄であることです。最
近ではカルチャーセンターなどでも手話を習うことができます。私は有料であ
ることはなんら問題がないと思います。トット基金などのしっかりした団体の
講習会もあります。
  しかし、その結果、手話通訳者が増えたでしょうか? 質が向上したでしょう
か? 確かにめちゃくちゃうまいスーパー通訳者を幾人かは輩出できたかもしれ
ません。でも、いまだに手話通訳者が設置されていない市町村が、こんなにも
あるのはどういうわけでしょう? 民間でなくても、普通の講習会も同じです。
なぜ、あんなに受講者がいるのに手話通訳者が増えないのでしょうか? なにか
とてもいびつな形で手話講習会が広まっているような気がします。
  全通研副運営委員長の石川さんは講演の中で「地域との関わりがないから問
題だ」と述べていました。私も半分はそう思いますが、それだけではないよう
に思います。ろう者自身、何か他人事のように思っていないでしょうか。そし
て健聴者は後先何も考えずに行動していないでしょうか。その結果が地域をな
おざりにした講習会になってはいないでしょうか。目的意識が指導者も受講者
もしっかりしていれば有料であることには何ら問題がないと思います。手話に
ちょいとでも関わっている人は、他人事とは思わずしっかり問題を把握すべき
で、先達は把握させるべきです。特に「把握させる」努力はもっと必要だと思
います。

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  3つ目は手話は事実上、独占されているということです。これによる弊害が
結局、手話通訳者の育成を阻んでいる面があると感じます。例えば、都道府県
レベルの登録通訳者。石川県の登録手話通訳者が東京に引っ越せば、ただの人
です。何年か地元で活動して、初めて登録試験の受験資格を得ることができま
す。こんなもったいない話がありますか。

  以前の手話技能検定の記事(No.37,38)に対して、Ex-No.9でも紹介しました
が、技能検定がどうのという前に、全日ろう連や全通研の手話通訳に対する独
占意識への批判がとても強い。地域との関わりなんて話を持ち出しても、外野
から見れば、それは自分たちの団体傘下への帰属に映るわけです。例えるな
ら、地元のためといいつつ、農業団体へのみの助成金を誘導する政治家みたい
に見えるようです。このあたり、全日ろう連や全通研は認識を改めないと、
10年、20年先に困った状態になると思います。

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  今回の話は噂話で構成されているので、事実は皆さん自身でご確認下さい。
手話技能検定協会のホームページのURLは以下の通りです。掲示板には、今回
引用した谷さん、神田先生、そして私の発言が載っています。

  http://www.shuwaken.org/index.htm

  では、また来週。

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  まだ、いくつか紹介したいものがあるので、来週も続けます。
  では、また来週。

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