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               _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』  _/_/
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No. 24                                              2000年12月13日発行
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  あっと言う間に12月も半ばです。全通研討論集会の申込書も送られてきまし
た。今度は大阪ですね。私は手話サークル関係に参加すると思います。参加す
る方、どうぞ、よろしくです。

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  今回は手話サークルの指針の続きです。前回は前文でした。まずはその続き
の部分をご紹介します。

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1. 指針設定の前提

  昭和51年当時の手話サークルは、(財)全日本ろうあ連盟の「ろうあ者の生活
と権利擁護を目的とする手話通訳の養成」の方針に沿って、専任通訳の設置を
要求する運動等との強い連携が求められ、公私にわたる手話通訳依頼に答える
活動を行うと共に、手話通訳養成事業とも深く関わらざるを得ませんでした。
それが、公共機関や団体の通訳設置が進み、ろうあ運動と連携する通訳運動に
も全国手話通訳問題研究会が参加してくるなど、手話サークルが一身に負わね
ばならなかったこれらの課題が分担され、専門的・社会的な深まりをもって取
り組まれるようになりました。

  また、地域の町内・学校・職場等における手話学習が、手話の社会的な広が
りを促進する役割をもって進み、結成の動機・目的の異なる様々な手話サーク
ルが誕生し、「51・手話サークルに対する基本方針」が現状にそぐわないもの
となって、見直しが提起されてきました。

  発展してきたこの条件下での手話サークルの目的や運営の在り方を問い直し
指針を提示するものでありますが、ろうあ運動は手話サークルの多様性と自主
性を基本的に理解しながらも、手話サークル側に、前文にあげたサークルの存
在意義を認識することにより、ろうあ運動との協調関係を深めていく取り組み
を期待し、そのための前提事項を次の通り示すものです。

  a. ろうあ者の要求と運動の目標実現を支持し、協力する一団体であること
     の確認。
  b. ろうあ団体とは別個の組織であり、会員の総意により自主的・民主的に
     運営される任意団体であることの確認。
  c. 幅広い真の意味でのボランティア活動を主任務とする団体であるとの確
     認。

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  この程度の文書を出すのに前提までつけるってあたりが慎重と言うか、大げ
さという気もしますが、こんな文書を出すだけでも、反発があるのでしょう。

  ここには「51手話サークルに対する基本方針」という文書の存在が書いてあ
りますが、事実上、ここにある文章で置き換わるようなので「語ろうか」では
紹介しません。(というか、物がないので紹介しようがないという事情もあり
ますけど。)

  前提からは、手話サークルの成立経緯が変わってきた様子がうかがえます。
以前は、ろうあ者と一緒に活動していた健聴者が手話を勉強する場としてサー
クルを作ることが多かったのですが、この指針が出る頃には、手話がサークル
以外にも広まり、カルチャーセンターで勉強する人、勝手にサークルを作って
しまう所も出てくるようになります。聾者が関わらずにサークルが出来てしま
うと言うことは、手話がろうあ者にとって必要なものであるということを理解
せずに勉強することにつながります。それに対する全日ろう連の焦りみたいな
ものも読みとれます。

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2. 手話サークルの目的

  手話学習を通して、ろうあ者問題を深めると共に、社会啓発を行うことによ
り、ろうあ者の基本的人権の擁護と社会参加を促進することを目的とすべきで
具体的には下記の取り組みを行うことにあります。

  a. 手話を正しく学習し、手話普及と社会的な認知を促進する。
  b. ろうあ者の生活・文化・歴史等を正しく学び、その知識を社会に還元す
     る。
  c. ろうあ者を含めた障害者の生活・権利の制約を正しく把握し、それをな
     くすための活動を行う。

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  いよいよ本題のサークルの目的です。いよいよ、このあたりにくると、うー
んとうなってしまう人もいるんじゃないでしょうか。ろうあ者と関わりがない
サークルでは、こんな話は知ったこっちゃないのでしょうし、普通のサークル
でも文化、歴史、権利なんてことまで頭が回らないところは多いと思います。

  サークルの目的とは難しい話です。サークルに対する思いが一番出てくる話
ですから。人それぞれ思いは違いますし、温度差もあります。指針でも目的は
述べられていますが、これはどちらかというと協力団体側から、上から(上っ
て何って話はさておき)、からの意見という印象を受けます。

  ここで目的を様々な立場から考えてみたいと思います。
  健聴者の参加者としては、
    1. 手話の勉強
    2. 聾者との交流
  が2大目的としてあげられるでしょう。
  ろうあ者としては
    4. 手話を広める場
    5. ろう運動の前線基地
    6. 聾者同士の交流の場
  ともなります。
  通訳者としてサークルとの関わりもあるでしょう。だいたいは上記に重なる
ところがありますが、あえて言えば
    7. 通訳者をスカウトする場
というものもあると思います。もっとも聾者も通訳者を選ばなくてはなりませ
んから、通訳者だけの目的ってわけでもありませんが、自分の後継者や将来の
同僚を探すという点で、通訳者には切実な目的であります。
  まだ色々あるとは思いますが、だいたいこれぐらいで分類しておきます。こ
ういう目的から何を最優先するかでサークルの雰囲気が違ってきます。全日ろ
う連の立場としては、5のあたりを優先させたい気持ちがあるようです。健聴
者としては1でしょうね。カルチャーセンターの講座なんかはその典型でしょ
う。

  どれもこれも大切なことで、全部が満たされればいいのですが、なかなかそ
うはいかないでしょう。まず、時間的にできるかどうかという問題がありま
す。そして、それが正しいのかという問題があります。手話を勉強するのはい
いとしても、はたしてそれが正しい手話なのか? 「語ろうか」の内容もそうで
すが、悩み出すときりがありませんけどね。それから個人の能力の問題もあり
ます。歴史を勉強するにしても個人史はそれぞれが話せばいいとしても、全体
的な通史を語れるだけの人はそうそうサークルにいません。

  できるだけ努力して、全部カバーしたいものですが、サークルでは時間、人
材が限られます。歴史の勉強まで手が回るサークルは少ないのではないでしょ
うか。とはいいつつも諦めずに、書籍や「語ろうか」などを活用して、手話の
技術だけでなく、幅広く手話で勉強して欲しいものです。

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  さて、話がちょっと変わりますが、常々、私は、手話サークルというのはか
なり変わった存在だなと感じています。その理由をいくつかあげますと

  - 手話サークルという割には、手話ができない人が沢山いる。
      まぁ、勉強中の人が多いからしょうがないかという感じはありますが、
      辞める人が多いのは残念なことです。

  - 穏やかな印象の割には、担っているものが深刻である。
      サークルが活動している公民館のスケジュール表を見ていると、他の部
      屋は囲碁、将棋、華道、社交ダンス、パッチワークなどの趣味団体が
      使っています。そのようなサークルと手話サークルはとても同種とは思
      えないのですが、なぜか不思議とすんなり収まっています。

  - 障害者問題に関わっている割には切迫感がない。
      点字サークルでは本を一生懸命点訳していたりします。参考書を点訳す
      る時は、それを送る相手を高校や大学に入れたいという感情もあり、皆
      さん必死です。でも、手話サークルではただ手話を勉強しているだけで
      も成り立ってしまっています。手話通訳が必要とはわかっていても、た
      いていの人は、それは自分とは関係のない世界という遠い目をしていま
      す。

  - 市民運動にも関係している割には使命感が薄い。
      通訳者の設置や情報保証など、行政交渉が必要な場合や署名活動などが
      あるわりには、それを担っているのは普通のおばちゃん達だったりしま
      す。環境問題とか女性問題とかに熱心なNGOのように使命感あふれる熱
      血漢...という人はあまり見かけません。

あとの2つについての、全日ろう連側のフラストレーションが次の節である「
手話サークルの組織」に見て取れます。

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3. 手話サークルの組織

  手話サークルは、地域や職場、学校等で手話を学びたい健聴者の自主的組織
であり、その運営・人事等は会員の合意を基本とすべきです。また、地域のろ
うあ者や他の障害者との交流、共同事業を通じ、障害者に対する正しい理解を
広げる組織であります。

  最近の手話サークルの特徴は、地域・職場等の手話を学ぶ集団により結成さ
れ、一つの市町村に複数の手話サークルが誕生していることです。

  これは、手話を地域の隅々まで広げ、ろうあ者の社会参加を促進する上で効
果的でありますが、一方、手話サークル巻の連帯がなく、ろうあ者団体とも関
係しないサークルも存在することになります。従って、都道府県・市町村レベ
ルの連絡・協議機関を設置することにより、地域ろうあ団体との連絡を密にし
効果的な活動ができるようにすることが望まれます。

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  組織、なんて話が出てくること自体、全日ろう連は手話サークルを運動体と
して位置づけていると言えるでしょう。そして、その物理的制約として、手話
サークルの個数にまで言及していることに驚かされます。

  あなたの市町村に手話サークルはいくつ存在しますか? 人口にも寄ると思い
ますが、個人的な印象では20万人あたりが境目で、それ以下では1つ、それ以
上では複数になるような気がします。まとまりという点ではやっぱり1つの所
がすばらしい成果を残しているように感じます。

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  今週は切れ味が悪いって? その通りです。ちょっと切り口に迷っているので
す。いましばらく我慢して下され。

  では、また来週。

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