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No. 15                                              2000年10月11日発行
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               _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』  _/_/
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  1週間ぶりのご無沙汰です。皆さん、連休はいかがでしたか? 私はすっかり
遊びほうけてしまいました。原稿書くのに四苦八苦です。

  この「語ろうか」は現在500名チョイの人が読んでいます。ご意見Mailから
推測するに、そのうち大部分、90%ぐらいは初心者の方とお見受けします。し
かし、先週の「語ろうか」は珍しく残りの10%ぐらいの長年やっている人から
の反響が大きく、ちょっと嬉しく思っています。内容は辛辣なのが多いんで
すけど。ということで、いつもと変わった形式での続編を考えています。乞
うご期待下さい。(No.19ぐらいかな...)

  今週のヘッダは京都の五里さんの提供です。

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  今回は、5回区切りということで、私の経験談です。(前回はNo.10でした。)
  題して「情報提供施設 in 石川県 その2」です。

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  情提建設活動は、マンネリ化しながらも少しずつ進んでいきます。そして、
とうとう1995年3月に寄付金の総額が1000万円を越えます。ろう協の新聞では
ろう協会員や通研、サークルの皆さんの熱意の結晶として喜びムードの記事が
載りました。が、私個人は喜びと共に「もう後戻りできないな」という気持ち
もありました。100万円でも、1円でも、寄付を集め始めた時点で後戻りできな
いことは確かなんですが、現実に1000万円という額を前にして、うなってし
まったのも正直な話です。

  そもそも、この程度の額では何もできないということもあります。この時の
準備会は、まだ「建物を建てる」という予定で進んでいました。つまり、土地
を確保し、新規の建物を建て、それを情提にしようとしていました。そのため
には、土地代、建設費が必要ですが、事務所やビデオライブラリー、会議室な
ど必要な設備を備えたものを造るためには、億単位のお金が必要です。1000万
なぞ焼け石に水です。1000万集めるのに数年。となれば、数億集めるには100
年以上かかる計算に、諦めムードがあったのも事実です。

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  そこで、この頃から準備会は独立施設の建設から、土地の無償提供先を探す
方針に転換します。これには点字図書館という先例がありました。この頃、金
沢市内に点字図書館の建設が始まります。視覚障害者ができるなら、聴覚障害
者もできるはず。よし、土地は県か市から提供してもらって、建物だけなんと
かしよう、と。

  ここに設置主体と運営主体という話が登場してきます。設置主体とは情提を
造る者、運営主体とは情提を動かしていく者です。者といっても、この場合は
人間ではなく(大富豪なら人間でも可能ですが)、これは県か、市か、ろう協か
はたまた民間の任意団体かということになります。
  準備会のねらいは、設置主体は県、運営主体はろう協です。県に金を出させ
て、中は我々が取り仕切る、とても都合の良い計画ですが、法律上、これがな
んとかなりそうな状況がありました。それが1994年の身体障害者福祉法の改正
です。この37条に、情提の建設費用として国が1/2、県が1/4、残りは我々が負
担すればよいとなっています。

  でも、お金の問題は、まだまだ他にもあります。建設だけでなく、運営にも
お金がかかります。手話通訳は人件費の固まりですから、職員の給料をなんと
かしなければなりません。それを解消する手段がありました。実は建設の方に
も関わってくるのですが、それはろう協の社会福祉法人化です。

  法人というのは、法律的に人とみなす「権利主体」のことです。
  普通、法律は人間に関する事柄が書いてあります。中学校で基本的人権は憲
法に保障された権利だ、なんて勉強しますけど、権利があるのは人だけで、犬
猫には権利がないわけです。もちろん、東京タワーや富士山にもない。でも、
それだと不便なこともあります。例えば、会社。会社が法律的に権利やら何や
らを認められていなければ、事務所を構えることも、人を雇うこともできませ
んし、国としても税金を取ることができません。
  そこで登場するのが法人という概念です。法人とは、ある一定の基準を満た
す「もの」を人としてみなし、権利と義務を与えようという概念です。法人は
様々な法律で色々と規定されていて、ちょっと思いつくものでも、社団法人、
財団法人、学校法人、医療法人、宗教法人などなどがあります。会社も法人の
一種です。

  ろう協も法人になることは可能です。でも、法人になるためには条件があり
ますので、何でもというわけにはいきません。前述の法人の場合、学校、医療
宗教は問題外。これらはそれぞれ教育、医療、宗教に携わる団体のみが取得で
きる法人格です。となると、あとはお金を基盤にした財団法人、人の集まりで
ある社団法人、そして社会福祉に関わる団体が取得できる社会福祉法人。現実
には、以上の3つがろう協が取得できる法人格でしょう。

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  ところで、石川県の場合、県ろう協、つまり石川県聴覚言語障害者福祉協会
は財団法人でした。「よくもまぁ、お金のないろう協が財団法人を持っている
なぁ」と思いましたが、まさにそれが問題となったのです。

  この頃、橋本政権の元で行政改革が進行し、さらに特別養護老人ホームにか
らんだ汚職事件(1996年12月、我々は岡光事件なんて呼んでますが)が起き、特
別行政法人への視線が厳しくなっていました。

  県ろう協の場合、財団法人です。財団法人は多額のお金があって、それを基
盤に活動している団体、のはずですが、県ろう協のどこにそんなお金があると
いうのでしょうか? 昔はあったのかもしれませんが、私が知る県ろう協には、
そんな面影はありませんでした。また、お金を基盤にしているぐらいですから
財団法人は会計士などがいて、会計業務をしっかりやっているはずなのですが
県ろう協の場合、職員の給料にもふうふう言っている状態で、会計士なんて雇
うお金もありません。事業内容が社会的に必要であることはわかるとしても、
果たしてこれが財団法人として適正なのか? 監査が入ったら、一発で潰れるよ
うな状態でした。

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  以下、法律に絡んだ話です。ただ、申し訳ないことに、ちょっとここらへん
の理屈がいまだに私には理解できていないのです。というのも根拠となる法令
がどれかわかっていないのです。ですので、たぶん、これだろうという法令を
あげておきます。

  県ろう協は現状でも貧乏、四苦八苦。手持ちは寄付金の1000万円のみ。現実
には、情提を造るためには、社会福祉法人の設立の道しかありませんでした。
  身体障害者福祉法に基づく国庫負担については「身体障害者保護費の国庫負
担(補助)について(平成5年4月1日)」という法令に規定されています。これを
利用すれば資金上の問題はだいぶ楽になります。1/2は国、1/4は県が出してく
れるんですから、残りは1/4です。

  ただ、私が疑問に思ったのは、なぜ社会福祉法人にならないとこれを活用で
きないのかという点です。どうやら社会福祉法人の総元締めは厚生省。厚生省
がこれらの通知を出している以上、社会福祉法人化は避けられないのだろうと
思います。もっとも、建設資金に限らず、あらゆる面で、社会福祉法人でない
と受けられないのは事実です。

  社会福祉法人にはもう一つ懸案事項がありました。それは理事の構成です。
  理事については「社会福祉法人の認可について(昭和39年1月10日)」という
通知の第3章2項5号で、老人福祉及び障害福祉に係る入所施設を経営する法人
にあっては、理事の二分の一以上が社会福祉事業について知識経験を有する者
及び地域の福祉関係者であることとし、その他の法人にあっては、理事の四分
の一以上が社会福祉事業について知識経験を有する者であること」と規定され
ています。さらに念の入ったことに「社会福祉法人の認可について(昭和62年2
月4日)」には、知識経験者や福祉関係者の定義が述べられており、これによれ
ば単なる聴覚障害者ではどちらにも該当しないのです。

  つまり、理事の1/4は知識経験者という人を入れなければならないというこ
とです。通常、ここには大学の先生や福祉課の職員などが入るそうです。1/4
ですから、もしかすると全員知識経験者でもいいわけです。そうなると、社会
福祉法人をつくったとき、それが天下り組織になってしまう可能性もあるわけ
です。

  一方、財団法人は自由であることが魅力です。ろう運動も自由にできる。で
も、存続は難しかったし、お金はないのだから、一度つぶしたら復活はできま
せん。

  ここに、情提設立運動は、法人の設立という問題がドーンと降ってきたので
す。

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  最後に今回の原稿を書いているときに役だった参考資料を2つ紹介します。

  まずは厚生省のWebサイトです。しばらく見ないうちに法令を全て検索でき
るページが作られていました。これは便利です。
  http://wwwcl.mhw.go.jp/~hourei/

  もう一つは全日ろう連出版の資料の改編版です。これを読めばほとんどのこ
とはわかります。私の原稿の穴もわかるかも。値段は1000円ぐらいでタイトル
は「聴覚障害者センター聴覚障害者情報提供施設<資料集>」です。

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  この続きはNo.20までお待ち下さい。では、また来週。

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