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               メールマガジン 『語ろうか、手話について』

No. 5 Rev.1                                         2001年 8月29日発行
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  学生さんは夏休みも終わりに近づきました。台風もウロウロとしていました
が、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

  手話コミュニケーション研究という研究誌があります。これは全日本ろうあ
連盟の日本手話研究所が発行している機関誌です。今頃になって2000年12月号
が出ていたりと、かなりいい加減な発行をしていますが、内容はなかなか面白
いです。外れの時もあるんですけど。で、次号は「手話とデジタル技術」とい
うことで、工学における手話の入出力関係の研究の特集だそうです。現在進行
中の「自然言語処理学から見た手話」とも関係するので、興味のある方は是非
ご購読下さい。申込、問い合わせ先は以下の通り。

  〒602-0901 京都市上京区室町通今出川下ル 繊維会館内
             日本手話研究所 京都分室
             Tel. 075-441-6079
             FAX  075-441-6147
  「手話コミュニケーション研究」 1部800円(送料180円)
                                 定期購読1年間4回発行 3920円(送料込み)
   郵便口座 01090-1-58544
   口座名義 財団法人 全日本ろうあ連盟 日本手話研究所

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  今回は、先週に引き続き、前回に引き続き「手話勉強法試行錯誤」をお送り
ます。

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3. 機会を増やす

  聾者と会う機会があれば、当然手話を使う時間も増えます。言葉は使えば使
うほど覚えます。これは外国語教育でも常識となっています。ですから、留学
したり、ネイティブの人に習ったりするわけです。手話もサークルに行ったり
行事に参加したり、NHKの手話教室を見るなど、使う時間を増やせば、必ず上
達します。大事なことは「自分の手を実際に動かす」ということです。NHKの
手話教室を見ているときでも、漫然と見ているだけではなくて、手を一緒動か
した方がよく覚えられます。

  とは言っても、時間を作ることが、一番難しいとも思います。私の感じてい
る事なんですが、手話サークルに始めてきた人に、手話の勉強を始めたきっか
けを聞いて、その理由が「ドラマを見て興味を持ったから」という人は、身近
にろう者がいるわけではないので、手話を覚えるのに一つの壁があります。本
人がかなり努力しないと、結局はあんまり上達せずに辞めていくようなことが
多いように感じます。
  「職場に耳の聞こえない人がいるので」とか「学校の級友で聞こえない人が
いて、サポートしたいなと思っている」というような理由を言う人は、日常的
にろう者と会う機会があるので、手話の修得も早いですね。私もそうなんです
が、人間、差し迫ったことにならないと、なかなか腰が重くて動かないもので
す。

  ろう者と会わないのなら、機会を作るしかありません。一番お薦めはサーク
ルなどに通うことです。ただ、仕事を持っている方に、夜のサークルに毎週通
え、というのも酷な話でしょう。でも、平日が難しくても土日にもイベントが
あります。研修会や勉強会、運動会に福祉大会、講演会などがあります。アン
テナを張っていれば、どんな所でも月に2回はイベントで聾者に会うことは可
能でしょう。まずは、手話サークルや全通研に加入して、情報収集して、ろう
者に会う機会を自分なりに作ってみて下さい。

  そもそも、手話を使う機会を作るのは、継続していく意味からも重要なこと
です。聾者に会う機会がないのに手話を学んでも、もったいない気がしません
か? せっかく学ぶのなら継続して使うような場を自分で作っていくことが必要
だと思います。最近は手話検定というような試験もあるので、目標を作るのは
楽なんですけど、せっかくなら試験なんてちゃちなものではなくて、実践的に
「あの人に通じる手話を身につけよう」というような目標、つまり、ろう者の
知り合いを作って欲しいです。

  ところで、いくら機会を増やすためと言っても、実力が伴わないのに通訳に
行くのは駄目ですよ。通訳は実力を自他共に認められるようになってからにし
ましょう。

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4. 遠慮はしない

  サークルでの勉強会の時の様子です。

    「では、例文を表現してみましょう。○○さん、やってみて」
    「いえいえ、私はまだできません」
  という○○さん、よくいるでしょう。

  遠慮は絶対に駄目です。言葉の学習の場では、遠慮は美徳ではありません。
指名されたらさっさとやりましょう。モタモタしていると他の人の時間も削り
ますし、百害あって一利無し。さらに、そういう雰囲気を作ってしまうと、全
員の学習意欲もそいでしまいます。

  遠慮はしない、できれば積極的に自ら手を挙げましょう。

  もし、わからないときはどうしたらよいでしょうか?
  まず、ひと呼吸おく。自信がないのは誰もが同じです。わからないことは、
何かを考えてみましょう。単語がわからなければ、それを聞けばいいんです。
指文字という手もあります。文の組立がわからなければ、とりあえず日本語語
順でやってみましょう。

  とにかく、遠慮せず、とりあえず色々と自分の思うところで表現してみて、
多少ジタバタと考えることが大切です。講習会などで指名されても、訳が分か
らないから答えたくないと言う気持ちもあるかもしれませんが、教える側から
すれば、だいたいその人の実力がわかって指名しているわけですから、間違え
たって大丈夫です。それに、そのジタバタした結果を直してもらうことが勉強
になります。最初から正解を教えてもらっては、右から左へ抜けてしまいます
よ。というのも、言葉は正解とする部分が大きいので、正解だけではきちんと
した文を理解できないのです。

  例えば

    「まさお君は学校に行きます。」

  という文を

    「まさお君が学校に行きます。」
    「まさお君は学校へ行きます」
    「学校に行くのはまさお君です。」

  と言っても意味はだいたい同じです。(ニュアンスは違いますが。)

  でも、

  「まさお君の学校は行きます」

は明らかに間違っています。でも、このような不正解は、その言葉に精通して
いる先生からは出にくいものです。先生よりは「不出来な生徒」からの方が、
より真実みがあり、間違いやすい例が作られるものです。そうした不正解がど
うして間違いなのかを指摘されることは、とても効果的な勉強なのです。

  あと気をつけたいことは、ろう者に手話を教えてもらう時は、あまり健聴者
でごちょごちょ言わないのも大切だと思います。わからない時に、隣の健聴者
に聞くよりは、たどたどしくても指文字でろう者に聞くことをお薦めします。
というのも、健聴者同士で話をされると、教えているろう者として状況が把握
できなくなって、とても不安になるんです。ですから、疑問は、先生役のろう
者に聞いた方がいいです。その方が、答えも確実なわけですから。

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5. 真似をする

  通訳の世界でシャドウイングと呼ばれる方法があります。
  これは、ひたすら他人の手話を真似します。できるだけ、うまい手話を真似
します。ということは、つまり、聾者の手話を真似するということになります
ね。真似をすることで、手や腕に手話の動きを慣れさせます。意味はわからな
くても結構です。シャドウウイングの効果は

  - 手や腕が、手話の動きに慣れる。
  - 真似るためには必死に見る。よって読み取り力がつく。

という2点にあります。

  見るときは手の形だけにとらわれないで下さい。もしかすると、手のひらの
向きや腕の位置の方が重要なのかもしれません。頭の横で表すことよりも、頭
をポンポンと叩くことが重要なのかもしれません。手の形はどうでも良くて、
動きの静止している間のタイミングが重要なのかもしれません。そういう注意
のしどころも、真似をすること、よく見ることで身についてきます。

  重要なことは、少し気合いを入れてやること。なんとなくダラダラやっても
効果はありません。必死に見ないし、手の動きも精細さを欠きます。1日10分
でもいいので、短時間でいいので、集中して練習しましょう。

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6. 鏡に向かって自主トレ

  自分が聾者になったつもりで、鏡に向かって手話を表現します。逐一、自分
の手話を確認します。声無しで、自分の手話だけを見て、意志が通じるかを何
回も表現の工夫を考えて、話す練習をするのです。

  「自分で工夫するなんて、それでは誰に教えてもらうのか?」と思うかもし
れませんが、そんなことは気にしなくていいんです。手話を自分で編み出して
いいんです。
  少々こじつけがましい理屈ではありますが、私は手話を自分で編み出してい
い理由を、次のように考えています。昔々、聴覚障害者への差別が露骨だった
頃、手話はひっそりと使われていました。今のように、逆に手話が注目される
ようになったのは、ここ10年ぐらいの話です。それに昔はテレビで手話が流れ
ることも少なかったし、戦争などもあったりで、ろう者同士の交流もそれほど
あったわけではありません。そんなわけで、私は、今、手話は現在革新的な変
化を遂げつつあると見ています。まだ初期的な段階だと思います。正確には初
期か中期かはわかりませんけど、とにかく、今は「誰も」が手話を「編み出し
ている」状態にあります。ですから、あなたが自己反省しつつ、わかりやすく
的確な表現を試行錯誤しながら、自分の手話に改良を加えていくことは合理的
なことだと考えるのです。

  もちろん、ネイティブでないのですから、限界はありますが、ある程度まで
は自主トレで通じる状態までは持っていけます。

  例えば、「走る」という単語を知っている時、どうやれば過去形になるのか
未来形になるのか、強弱をつけるとどんな意味になるのか、表情を付けたり、
方向を変えるとどんな風に解釈できるのか? そんなことをグダグダと考えなが
ら練習するのです。声がない状態で、どういう風に見えるのか、鏡で確認しな
がら練習するわけです。かなりいいところまで上達しますよ。

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7. 通訳は見ない

  これは練習方法と言うよりは、心がけですが、サークルでは通訳でなく聾者
を見ましょう。初級手話講習会を見ていると、日本語に通訳している通訳者の
方を一生懸命見ている人がいます。人の目を見るように、というのが世間のマ
ナーですが、手話の勉強の時は、通訳者ではなく、聾者を見ましょう。話して
いるのは聾者なんですから。質問をする時も、ろう者の方を向いて、通訳者に
聞こえるぐらい大きな声で話すのが良いと思います。

  人にもよるとは思いますが、私は「俺を踏み台にして、もっとうまい通訳者
が生まれるなら、いくらでも踏みつけていけ」と思っています。だから、私が
サポートしている学習会では、私は黒子に徹するようにしています。みんなの
後ろに座るようにして、振り返らないようにしてもらいます。そうすると、参
加者は、ろう者からスムーズに教えてもらいやすくなります。なかなか現実に
は難しいですけど。ただ、勉強している立場として、今の通訳者よりももっと
うまくなるぞ、という気持ちは持っていて欲しいなぁ、と思います。

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  いかがでしょう? 2回にわたって練習方法を提案してきました。実践できそ
うなものはありましたか? 無理に実践する必要はありません。自分に納得でき
る方法を取り入れてみて下さい。それと、できれば改良案などを寄せてくれれ
ば嬉しいです。

  では、また来週、会いましょう。

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