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    メールマガジン 「語りあおうか、手話について」
                           (「語ろうか、手話について」増刊)
Extra No. 22                                        2002年10月16日発行
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  皆さん、こんにちは、徳田です。
  世間一般には運動会シーズンと思われる10月の3連休も終わった今日この
頃、みなさん、いかがお過ごしでしょうか。

  私は全国中途失聴者・難聴者福祉大会in千葉のパソコン要約筆記デビューを
無事に終わることができてホッとしております。そして、ふと我に返れば、前
にメルマガを発行してから、もう約1ヶ月。月1回以上刊行と言ってはいるもの
の、このままだと、そのペースも危うくなっている今日この頃です。気長にお
つきあい下さい。

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  今週もお便り紹介です。

  最初は、Extra No.21で日本語字幕DVDについて、村松さんからNHKのプロ
ジェクトXのDVDについて、補足がありましたので、ご紹介します。

  村松さん より
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  私は単品で心臓手術のを買ったので単品購入可です。
  これは是非NHKさんの名誉を守るために訂正してあげてください。
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  これは失礼しました。DVDボックスのことしか書かなかったのは誤解を招き
かねない表現でした。ということで、補足しておきます。

  プロジェクトXのDVDは、単品でも買えます。
  基本価格1本3619円+税金。
  でも、BOXだと10本で32,571円+税になったりします。

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  次にご紹介するお便りは、埼玉のNさんからのものです。ここしばらくの「
語ろうか」の原稿があがらなかったのも、この返信をどうするかで、ずっと悩
んでいたから、といっても過言ではないぐらいです。今も悩んでおりますが。
歯切れが悪いのですけど、とりあえず、まとめておきます。

  本ネタは、No.86の「公務員になりたいかぁ!」に対するご意見です。いいと
ころを突きすぎ、鋭すぎで、これは取り上げないといかんなぁ、と思いつつ、
コメントを考えるだけで2ヶ月かかってしまいました。

  Nさん より
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  (石川県では)なぜそんなに育っていて公募なのでしょうか? 地元ではいな
  いのですか? 通訳士ということで人材不足なのでしょうか? そんなに資格
  が大事ですか? 公正証書作成のときも資格者とは限定されていません。
    地元で一緒にやっている人が地元のろう者を一番理解しているのではな
  いのでしょうか?
    今は活動なく技術だけで(学校なので)資格をとっていく人が増えていま
  す。資格をとってもただの職員として、職を求めて仕事をするでしょう。
  でも、通訳者はろうの味方であるべきなのに、行政の職員になってしまう
  のです。それでいい制度と言えるのでしょうか?
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  私も、あの原稿を書きながら、石川の状態も、全部が全部うまくいっている
わけでもないのに誉めすぎだよなぁ、と思いました。それが最後の段落に表れ
ています。あの部分は、かなりとってつけた感じになっています。よく読めば
練った文章でないなぁ、とわかる人もいると思います。(もっとも、いつもこ
のメルマガは練った文章ではありませんけど。)

  いくつかコメントしなければならないと思うのですが、何を書いても取りこ
ぼしがあるような気がします。とりあえず、資格の話から。

  まず、石川は認定過程がすごく厳しいです。私が石川県にいた頃は、初級、
中級、上級に分かれていました。初級はあちこちで開かれる入門レベルの講
座。だいたい10回ぐらいで、7〜8割ぐらい出席すれば、最後に修了証書みたい
なのがもらえて、無事終了となります。これは楽チンです。どれだけ身につい
たかというより、何回通ったかで判定していますから、修了生は、おおむね指
文字がわかる、挨拶ができる、という程度です。

  問題は次の中級です。中級は受講する際に地元ろう協の推薦が必要です。で
すから、石川県内の手話業界から、全く顔を知られていない人が受ける可能性
はゼロなわけです。少なくともこの業界に片足を突っ込んでいないと、受講さ
えできない仕組みです。そして、中級には修了試験があり、これに合格しない
限りは、中級終了とはなりません。この試験は20人受けて、3人ぐらいが合格
する程度という、相当厳しいもの。もちろん、出席率が低ければ、試験は受け
られません。
  私は手話の勉強を始めて5年目ぐらいで、中級を受けました。その時の技量
と言えば、読み取りに難がありましたし、ようやく全通研には夏の集会と冬の
集会があるということがわかった頃です。当然落ちましたけど、その時に合格
した人の手話を見ていて「これはあと2回通って、通るかどうかぐらい難しい
わ」と思いました。
  ただ、他の地域になるといくらか易しくなったりという地域差が生じたり、
中級の合格者は県の登録通訳者になるということで人員不足の時は2人ほど合
格者が多かったり、となんとなくもやもやした感じもありまして、泣き笑いが
ありました。私の同期で、とても一生懸命勉強した人は、2回目の試験に落ち
た時には、メチャ泣いたそうで、結構語り草になっているそうです。落ちて泣
く試験なんて、最近、あんまり見ませんものね。それぐらい、受ける方も、思
い入れが強い講座でした。

  今にして思えば、たった2人程度が余分に合格しても微々たる差だと思いま
すし、地域差にしても開催が隔年といった事情を考えると、試験以外にもサー
クルや全通研の活動も考慮して合否を決めていたんじゃないか、と思う節もあ
ります。たぶん、レベル的には地域格差は、私が思うよりは小さかったかもし
れません。

  たぶん、今は厚労省の奉仕員養成カリキュラムに準拠する形で、当時の中級
は、奉仕員の養成講座になっていると思います。今でも落ちて泣く人はいるの
かなぁ? 当時とは事情が変わっているから、わかりませんけど。

  さて、当初のNさんの疑問に答えると、石川の通訳者認定過程は、上記のよ
うになっていますから、常に人材不足です。中級を受講するだけの人は結構い
ますが、合格する人は少ないわけです。これは、自分(ろう協)で自分の首を絞
めているという見方もできますが、ろくに通訳もできない人が通訳者として公
的に認定されてしまう方を懸念して、自主規制を厳しくしているという方が的
確ではないかと思います。

  ただ、こういうやり方は、ろう者だけが一方的に望んでも成り立ちません。
受ける側、つまり健聴である通訳者とその予備軍が状況を理解して納得してい
ないと、通訳者が少なくなるとか、いつまでたっても通訳者が育たないという
事態になります。その点、毎年、コンスタントに通訳士合格者を出し、公務員
での設置通訳者を誕生させた石川は、かなり、うまくいっているように見えま
す。たとえ、その影には数十人が涙を飲んでいたとしても、理解はおろか悪口
でののしられようとも、全体でエースが育ってくれればOKというわけです。い
え、実際は、そこまでひどくはないと思います。それほど、人口が多くない所
です。厳しいだけでは、どこかに無理がきて、崩壊してしまうでしょう。そう
なっていないのは、試験の合否以外のところに何かうまくいく仕組みがあるん
でしょうね。そのあたりは、私には、個々人のレベルではいくつか事例は上げ
られますが、全体としてストンと通りのいい説明はできません。私の場合も、
昔は「なんと理不尽な」と憤慨したこともありましたが、今は「これぐらい厳
しくないとダメなんかもな」と納得しています。そんな状態ですから、「手話
なんて大嫌いだ」と思って離れた人もいるでしょうし、私みたいになんとなく
納得した人もいるでしょうし、無事に試験を通過した人もいるでしょう。この
あたり、私にも、なんともよくわからないのです。

  ちょっと話を戻します。厳しくすれば、優秀な人は育っても、数は輩出でき
ないのは明らかです。それで、通訳者にはなれないけど、理解者は増えて、ろ
う運動は順調になり、設置が増えた。と、私は分析しています。その結果、不
足分を公募で補おうという方針にしたのではないでしょうか。他人の地域の通
訳者を取ってしまうという感じは否めません。それに、地域で育った人ではな
いと言うことで、色々な事情に疎い人が来るというリスクもあります。ただ、
石川の場合、中級未満の人がウジャウジャいるというおかげで、良く言えば層
が厚いので、技量的にうまい人が来れば、あとはなんとかなりそう、という雰
囲気があるように思います。人材を他から取ってきてしまうという点は、石川
からも人材流出があるので、お互い様ってところでしょうか。

  ということで、石川は資格第一主義ではないけど、資格を疎かにした時の悪
影響の方を懸念して資格を重視していること。中級レベルの層が厚いから、通
訳者として他県から人を招いても、なんとかできる、と、まとめられると思い
ます。問題は、中級を通らなかった人、中級レベルに達しなかった人を受け入
れる環境作りですね。すそのの拡大という点で、とても重大な問題をはらんで
いると思いますが、先日、石川に行った時も、そのあたりは、行き当たりばっ
たりでした。

  以上が、私の分析ですが、別の人ならもっとわかりやすい分析をしてくれる
かもしれません。

  さて、最後にチョットですが行政職員になるという点について。まず、必ず
しも、ろう者と行政が対立構造にあるわけではないと思います。確かに一般的
には対立構造になりがちとも思いますが、是々非々で進めていくと、結構うま
くいくもんです。この考え方にピンとこなかったら、スパイを送り込むような
感じ、といえばわかりやすいでしょうか。えぇ、もちろん、実際はそんなに物
騒な話ではありませんが。

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  次は趣をがらっと変えて、山口さんからのお便り。

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  質問なのですが、聾者は健聴者が読む本などは(小説など)、文章が理解で
  きないのでしょうか。
  聾者専用に翻訳された、小説などがあるのでしょうか。
  疑問だったのですが、聾者に聞くのも失礼な質問のような気がして、ずっ
  と考えていました。
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  最初から話が少しずれますが、素朴な疑問を解決する事は大事な事だと思い
ます。失礼かもしれないとか、気分を悪くされるかも、怒られるかも、という
心配はありますが、そのまま疑問のままにしておくと、「くさいものにふた」
をしている感じで、精神衛生上、良くないと思うのですよ。根本的には、日本
の教育では障害者を排除しているから云々という議論もあるかと思いますが、
障害者問題に限って言えば、現状がこうなんだから仕方ないです。その上で、
疑問を解決する事は、偏見や差別の打破につながると思います。

  それで、昔、私はhandicap FAQというものを作ろうとしたことがあります。
これは素朴な疑問をまとめておいて、自由に誰もが読めるようにする計画で
す。例えば「目が見えない人は、夢を見るのか?」なんて質問に対して、答え
をつけてWebページにおいておけば、そんなささいな疑問を持つ人がいても、
たちまちのうちに解消できるわけです。アメリカにそういうサイトがありまし
て、それをパクッてきただけですけどね。
  それが、色々と忙しかったりして中途半端に終わってしまいました。そんな
わけで、全然手つかずにいたのですが、昨年、ある人が、それを発掘してくれ
まして、今後の体制を作ってくれました。その後、あまり進展がないようです
が、もし、興味のある人は以下のサイトにアクセスして下さい。助っ人をお願
いします。

  http://www.m45.hn.org/handi/

  話を戻して、ろう者用の小説ということですが、つまり、日本語をどこまで
ろう者は理解できるのか、ということですよね。これは年代差、個人差が激し
いです。年代差は教育の問題とも言えますし、個人差は失聴の程度や時期、母
国語として何を使っているか、という問題になるでしょう。

  今の若い人で、ろう学校で口話教育をバリバリに受けた人は、全く問題なく
日本語を読み書きできますが、戦争を生き抜いてきた世代の人は苦手な人が多
いでしょう。私の手話の師匠は、戦後生まれで、すごく綺麗で理路整然とした
手話を使いますが、FAXで連絡をもらった時、難解なときがあります。特に「
てにをは」が苦手みたいです。ですから、私から確認のFAXを入れる時は、箇
条書きにするとか、「いつ」「どこで」「何を」「どうしたいのか」を最も日
本語としてわかりやすい順番で書いた文にします。そうすると、だいたい大丈
夫ですね。だいたいですから、時にはすれ違いがあったりします。

  あと思いつくことでは、ろう者に理解しやすい日本語への自動変換の研究と
いうのもあります。
  http://cactus.aist-nara.ac.jp/~inui/index-j.html

でも、結局のところ「手話でわかりやすい人には手話で、日本語でわかりやす
い人には日本語で」という結論になっちゃいますね。とりあえず、今日は、こ
れで勘弁して下さい。

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  「語ろうか」への苦情、文句、意見、たれ込み情報は

      tokudama@rr.iij4u.or.jp

までE-Mailにて送って下さい。基本的には氏名(匿名も可)、居住都道府県付き
での情報を期待していますが、今までの経過を見ていますと、あまり守られて
いないので、そのあたりはどうでもいいです。
  でも、Subject(題名)には、「語ろうか」とか「kataro」といった文字を入
れて下さい。沢山届くmailに埋もれて、捨ててしまうかもしれませんので、こ
れだけは守って下さい。過去に「語ろうか」への文句なのか、ある研究会での
私の振る舞いに対する意見なのかがわからずに悩んだことがありますので、
Subjectにだけは「語ろうか」と入れて下さい。よろしくお願いします。

  寄せられた意見は事前の断り無しに増刊号などで公表する場合があります。
公表されたくない場合は、わかりやすい位置にその旨書いておいて下さい。今
のところ、公表する場合には匿名にしていますが、「どうしても実名で」とい
う場合にも一筆お願いします。

  それから返事はあまり期待しないで下さい。結構、返事を書くのは時間がか
かったりします。今のところ、7割ぐらいの人に返信していますが、これでも
自分では結構頑張って書いたと思うぐらいです。それに、今、書く返事は感情
にかられてまともな文章は書けないような感じがします。だから、返信が戻ら
なくても事情を察してください。メールは全部読んでいます。寄せられたご意
見、苦情、文句については、できるだけ本編に反映させるようにしますので、
本編にご期待下さい。

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  一応、新作も作っていますが、どうなることやら。それに、超爆弾級のネタ
を提供してもらったのですが、自分の中でのまとめがふにゃふにゃしているの
で、予定は未定です。
  それでは、次回をお楽しみに。

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